ビジネス

2019.04.18

海外でも自宅で美味しいラーメンを ラーメン愛が突き動かした、日本人起業家の挑戦

Ramen Heroのミールキットから作られたラーメン

今や“国民食”と言われるほど、日本で市民権を獲得しているラーメン。そのラーメンを海外でより手軽に食べられるようにすべく、サンフランシスコを拠点に奮闘している起業家がいる。Ramen Heroの長谷川浩之だ。

Ramen Heroはラーメンに特化した「ミールキット(食材セット)」を米国で展開するスタートアップ。豚骨や味噌、醤油など定番の味から、スパイシー豚骨など米国人好みのもの、さらにはビーガンラーメンなど、常時10種類前後のメニューが揃う。ウェブサイト上から好きな味を選びオーダーをすると、翌週には自宅に麺やスープ、具が同梱された冷凍のラーメンキットが届く。 調理時間は15分ほどで、東京の人気ラーメン店のような本格的なラーメンが味わえる。価格は15〜17.5ドルほどだ。



2018年、本格的に事業をスタートさせたRamen Hero。注文数は2000件を突破し、サブスクリプション(定期購入)型のプランも始めるなど着実に事業を成長させている。そして2019年3月中旬、同社はニューヨークに拠点を置く米国のトップシードアクセラレータープログラム「AngelPad(エンジェルパッド)」を日本人起業家として、初めて卒業したことを発表した。

順風満帆な起業家のサクセスストーリーのように思えるかもしれないが、長谷川は「今に至るまでは本当に失敗の連続で……。最初の3年間は暗黒時代でした」と言う。

彼はなぜサンフランシスコで挑戦しようとしたのか。そして現在の事業に辿り着くまで、どのような紆余曲折があったのか。長谷川のサンフランシスコでの5年間の奮闘に迫る。

暗黒時代に食べたラーメンが、事業化のきっかけに

「もともと、自分は誰もやっていないことに挑戦したい気持ちがありました。日本で起業をする人は増えていますが、米国で大きな事業を作った起業家はまだそう多くありません。であれば、自分はそれにチャレンジしたいと思いました。そして、やるのであれば、かつてはヒューレット・パッカードやインテル、過去20年にはグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンを、そして近年ではウーバーやAirbnb、Slackなど、世界的な企業を生み続けているシリコンバレー、サンフランシスコだろうということで、このベイエリアという場所を選びました」

長谷川がサンフランシスコに渡米したのは2014年。東京大学卒業と同時に4名のチームでスタートアップを創業したが、1年ほどでクローズ。それを機に、事業アイデアも人脈もなかったが、憧れの場所であったサンフランシスコ行きを決意。渡米後はChompの小林清剛とAnyplaceの内藤聡と行動を共にし、現地のコネクションを築きながら、事業のアイデアを考えた。

「当時は『米国で大きな事業をつくってみたい』という思いしかなく、ラーメンを事業にするとは全く考えてもいませんでした」

あれこれ事業アイデアを考えたものの、なかなかしっくり来るものはなく……。試行錯誤を繰り返し、自分が心から欲しいと思え、腑に落ちたのが、海外旅行者向けのチャットコンシェルジュアプリだった。この事業アイデアに共感してくれた投資家にも出会い、資金調達を検討していたものの、最終的には事業を畳む決断を下す。
次ページ > この事業でナンバー1を狙えるのか

文=新國翔大

ForbesBrandVoice

人気記事