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2019.04.19

苦境の中国Eコマース大手JD.com、「怠け者社員追放」宣言 

Photo by Lintao Zhang/Getty Images

中国のEコマース大手「JD.com(京東商城)」を率いるビリオネアのリチャード・リウ(劉強東)は先日、「社内から怠け者を追放する」と宣言した。巨額の損失を抱える同社は組織再編を進めているが、アナリストらは短期間での業績回復は難しいと予測する。

「当社の人員は膨らみすぎた。注文件数は増えているが、真っ当に働く社員が減っている」とリウはWeChatに投稿した。「大量の怠け者たちが会社にいる」

北京本拠のJD.comは先日、配送スタッフの基本給を廃止し、組織の再編も進めている。現地メディアは同社が人員削減にも乗り出したと伝えたが、JD.comはこれに反論した。

広報担当者は「当社は大規模なリストラを計画していない。今年は1万5000名の新規採用を検討中だ」と述べ「組織再編によって社内の起業家精神を高め、成長を取り戻す」と話した。

ただし、JD.comは格安Eコマースの「Pinduoduo(拼多多、ピンドォドォ)」らとの競争に直面し、ディスカウントによって中国の2級都市の利用者を引き込もうとしている。同社はグループ購入サービスのJD Shangouの導入で、Pinduoduoに対抗する構えだ。

上海の調査企業Pacific Epochによると、同社の格安コマース部門は急拡大を遂げたが、すぐにはPinduoduoに匹敵する規模にはならないという。

2018年末時点のJD.comのアクティブユーザー数は、約3億人だったが、Pinduoduo (ピンドォドォ)のアクティブユーザー数は既に4億人を超えている。JD.comの昨年第4四半期の売上は、アナリスト予想を上回る196億ドル(約2.2兆円)に達したが、マーケティングやロジスティクス費用の増大により損失も7億ドルにまで拡大した。

JD.comは2014年のナスダックへの上場以来、通年での黒字を達成できておらず、過去5年間の累積赤字は29億ドル以上に膨らんだ。追加の収益を狙うJD.comは、外部企業に配送サービスの提供を開始した。

しかし、配送スタッフの賃金引き下げに踏み切ったことで、今後は人材の流出も懸念される。調査企業Blue Lotus Capital Advisorsによると、同社の配送スタッフの平均賃金は月額で約1191ドルだが、基本給の廃止により20%の減額となるという。

リウはこれらの措置は、経営の建て直しのために必須のものだと述べた。彼はJD.comの配送部門を2017年に「JD Logistics」として独立させ、企業価値109億ドルで資金調達を行った。しかし、JD Logisticsは翌年23億ドルの損失を生み、調達資金は今後2年も持たない状況だ。彼はこの状況をWeChatで説明し、現地メディアでも報道された。

幹部社員らが相次いで退職

リウは配送スタッフに対し、より多くの注文を取ることを促した。彼は、企業年金などの福利厚生は、これまでと変わらず提供すると述べている。

一方でJD.comでは、過去2カ月で幹部社員らが相次いで退職している。テクノロジー主任や法務主任、広報主任らが「健康問題などの個人的理由」で会社を去った。同社は昨年末から、社内の組織再編を進めていた。

しかし、JD.comの株価は昨年1月の最高値から40%近く下落し、リウの資産額は50億ドル減少した。リウの資産額は現在、74億ドルと試算されている。アナリストは、JD.comが今後の成長を見込めない中で、リウは自身のポジションを守るためにリストラを進めていると分析している。

「中国経済の今後の見通しは不透明であり、組織の再編やコスト削減を進めても、JD.comが復活できるかどうかは分からない」とPacific Epochのアナリストは述べた。

編集=上田裕資

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