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#醸し人

木村石鹸工業の木村祥一郎社長

利益向上、市場拡大、株価上昇と、目に見える成果を追い駆けることばかりが、必ずしも「正解」として求められることがなくなってきた昨今。これからの組織、そして私たち個人の在り方はどう変わっていくのだろうか?

そのヒントを探るべく、日本の酒蔵の多様性を継承することを目的に、ユニークな事業展開を進める「ナオライ」のメンバーが、これからの社会を創るキーパーソン、「醸し人」に迫る連続インタビュー。

第4回は、Forbes JAPANの「SMALL GIANTS 2019」にも選出された木村石鹸工業の社長、木村祥一郎さん。木村さんは、2013年に、家業である大正13年創業の同社に入社したが、それ以前は、日本発の検索エンジンを開発した「ジャパンサーチエンジン(現e-Agency)」を1995年に立ち上げ、副社長も勤めていたという異色の経歴を持つ。

2015年には、自社のオリジナルブランド「SOMALI(ソマリ)」の開発し、それまで業務用石鹸やOEM製造が中心だった事業を拡大、また、前職での経験を生かしたインターネット販売もスタートさせ、業績を伸ばしてきた。2016年には、4代目の社長に就任。なにより社員やその家族を大切にするしなやかな経営方針は、大きな注目を集めている。木村社長の考える独自の会社経営の「かたち」を訊いた。


──社員の幸せをまず考えるという木村社長の経営が非常に興味深いです。具体的にはどんなものなのでしょうか。

子育てや家庭は妻に任せて、夫は仕事や会社のような風潮はいまだにありますが、木村石鹸では、家族との生活がすべてのベースにあるという前提で、組織がきちんと機能しています。

例えば、「子供が体調を崩したので、今日は休みます」と言われることに、社員の誰もが違和感を持たない。その状況であれば休むのは当然で、むしろそうしなければ「もっと家庭を大切にしろ!」と誰からも「ならず者」扱いされてしまう(笑)。

以前、大手企業で勤める方にそのことを話したら「ウチではありえない!」と言われました。子供が熱を出して欠勤を繰り返すと、次第に周囲の目が気になり出して、会社に居づらくなるそうです。「あいつ、仕事より家族を優先しやがって」という空気感ってあるじゃないですか。会社の制度上は休んでも問題なくても、実際にそうすることは難しいみたいな。


木村石鹸で20年続く「親孝行強化月間」では、4月に社員全員に一律1万円が支給される。その1万円を使って、普段なかなかできないちょっとした親孝行をしましよう、という気持ちが込められているそうだ。

会社の論理を優先するのは、沢山の人を効率良くマネジメントして、動かすうえでは最適解かもしれません。でもそれは、社員を「代替可能な部品」として見るのと同じことだろうと思うんです。

家庭や生活を優先させることで社員が好き勝手し出すかというと、そういうわけではない。むしろそこには助け合いが生まれるし、プライベートも大切にしていいんだという安心感が、会社に対する愛情やコミットに繋がっているようにも思えるんです。

──その考え方は、ご自身の経験からも来ているのでしょうか。

僕には、忙しさを理由に、家庭が犠牲にされたということが一切ないんです。小学生の時、当時1階だけだった工場を3階にまで増築したんです。しかも、ほぼ自前でやったのです。鉄板を買って来て、ネジをつくって、溶接して、配管して、それこそ家族総出です。

作業自体は好きではありませんでしたけど、仕事を手伝うことで両親とたくさんの時間を共有できたのは良かったですね。僕が寝た後、父はさらに研究室に篭って商品開発をしていました。僕が起きている時は可能な限り一緒にできることをしてくれていたんだろうなと思います。その時に感じた家族の一体感というものを、今でも大切にしたいと思います。

監修=谷本有香 インタビュー=三宅紘一郎 校正=山花新菜 撮影=大田 元

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