ディズニーは、2012年にネットフリックスに対し映画コンテンツを独占的に提供する複数年契約を結んでいた。その翌年には、ディズニー傘下の「ABC Television Studio」が製作した「デアデビル」や「ジェシカ・ジョーンズ」、「ルーク・ケイジ」などマーベルのキャラクターが登場する作品をネットフリックスオリジナルとして配信する契約を締結している。
Disney+は、ディズニーにとってこれまでの戦略を大きく転換することを意味する。米国では、ネットフリックスの人気の高まりを受けてケーブルテレビ契約を解約する「コード・カッティング」が進んでいる。ディズニーの稼ぎ頭であった「ESPN」の有料会員数は2013年のピークから1300万人減少し、ディズニーチャンネルも数百万人の視聴者を失った。
こうした事態を受け、ディズニーは2017年に方針を転換し、ネットフリックスからコンテンツを引き上げ、2019年に独自のストリーミングサービスを立ち上げると宣言した。2017年8月、ディズニーはMLB(米大リーグ)が設立したビデオストリーミング会社「BAMTech」に15億8000万ドル(約1770億円)を出資して傘下に収めた。
「低い利益率」に耐えられるか
BAMTechの技術は、Disney+に用いられる。また、同年12月には21世紀フォックスを713億ドル(約8兆円)で買収して世界No.1のエンターテイメント企業になり、ネットフリックスに対抗するためのコンテンツライブラリを手にした。
21世紀フォックスの買収により、「X-Men」と「ファンタスティック・フォー」のキャラクターが他のマーベルのキャラクターと合流し、「ザ・シンプソンズ」と「アイス・エイジ」がディズニーとピクサーのアニメライブラリに加わり、ジェームズ・キャメロン監督による「アバター」シリーズ4作品がディズニーブランドとなった。
また、この買収によりディズニーは、「Hulu」の支配権も手に入れた。Huluは、コムキャスト傘下のNBCUniversalと、AT&T傘下のWarnerMediaが共同保有するストリーミングサービスで、有料会員数は2500万人を超える。
これまで、ディズニー社内では、部門ごとに異なるデジタル戦略を推進していたが、2018年3月に組織再編を行い、同社による大型M&AをリードしたKevin Mayerがストリーミング事業を統括することになった。
世界最大のメディアバイヤーの1つであるGroupMでビジネス・インテリジェンスの責任者を務めるBrian Wieserは、次のように述べている。
「ディズニーがストリーミングサービスの低い利益率を許容し、積極的な投資を続ければ、ネットフリックスやアマゾンプライムビデオの強敵になるだろう」