結婚した人は、いまだに勝ち組なのか?

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私が生活するイギリスも例外ではない。2016年の英国国家統計局によると、男性はおよそ3人に1人(38.1%)、女性もおよそ3人に1人(31.6%)が未婚となっている。婚姻率は男性は2.17%(未婚者1000人に対して21.7人)女性1.98%(同19.8人)となることが分かった。これは過去最低値であり、前年2014年の値から未婚者1000人あたり3.4人減った値となる。

日本では「最近は離婚する人が増えている」と言われることも多いが、本当にそうだろうか。たしかに2003年から2014年までは増加傾向にあったがそれ以降は減少している。単純に婚姻率が下がっているからそう見えるだけかもしれない。離婚が増えているから結婚を躊躇する人が増えているとは考えにくい。

独身者に聞いた「結婚していない理由」

それではなぜ、現代人は昔ほど結婚しないのか。国立社会保障・人口問題研究所が実施した出生動向基本調査内の独身者の意識調査の結果が非常に興味深い。

日本の独身者のうちいずれは結婚しようと考える割合は、男性85.7、女性89.3%で、高い水準にあるという。加えて、「それでは今から一年以内の結婚に関してはどのようにお考えですか」という問いに対しては、男性52.6%、女性45.9%と約半数はまだ結婚するつもりはないと回答している。

結婚する利点についての質問への回答は、「自分の子どもや家庭がもてる」や「親や周囲の期待に応えられる」は増加傾向にあり、「精神的安らぎの場を得られる」や「愛情を感じている人と一緒に暮らせる」は減少傾向にある。結婚=家族の結びつきはいまだに大きそうだ。

一方で独身者は独身であることにも利点を感じている。「それでは逆に今のあなたにとって、独身生活には結婚生活にはない利点があると思いますか」という質問に対し、男性は83.5%、女性88.7%は「利点があると思う」と回答している。その理由としては「行動や生き方が自由」を挙げる人が圧倒的に多い。


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さらには結婚意思のある未婚者に独身でいる理由をたずねたところ、18~24歳層では特に女性は結婚“しない”理由として「仕事(学業)にうちこみたい」が増加し、18~24歳ではもっとも多い理由となっている。一方、25~34歳の年齢層では、「適当な相手にまだめぐり会わない」と男性45.3%, 女性51.2%が “結婚できない理由”として挙げている。

前述のとおり平均初婚年齢は年々上がってきていて「自由さや気楽さを失いたくない」「まだ必要性を感じない」ため結婚”しない”と考える未婚者は多い。男性も女性もキャリアやライフスタイルが多様化し選択肢も増えていて、もはや人生における結婚の優先順位は下がりつつあるようだ。

BUSINESS INSIDERが発表した「2018年で最も収益をあげたアプリ TOP10」には、恋愛マッチングアプリのティンダーが第3位 (約524億円)にも入る。一見、昔よりもさまざまな方法で容易に出会える機会がありそうだが、適当な相手にめぐり会えないと考える人が多いのもまた皮肉である。

上記以外にも、結婚できない理由やしない理由はあると考える。

日本の法律が足かせとなり、できない結婚もある。お気づきかもしれないが上記の基本調査は異性同士の結婚・未婚を前提としている。

2019年2月14日、同性同士のカップルが結婚できないのは憲法が保障する結婚の自由や平等原則に違反するとして、13組の同性カップルが一斉に提訴した。憲法では結婚について「両性の合意のみに基づいて成立」と定められているが、同性同士を禁止しているとはいえず、結婚の自由を侵害していると訴える。同性婚が認められないことの違憲性を問う初めての訴訟である。

現在、G7の国のなかで同性結婚または同性パートナーシップを認める制度がないのは日本だけである。このコラムでは同性婚の賛否を問わないが、性自認や性的指向によっては結婚したい相手とできないケースもあるのだ。

また結婚しない理由として、夫婦別姓を選択できない不自由を挙げる人もいる。結婚するときに夫婦にて別姓を選べない戸籍法の規定は憲法に違反するとして国を訴えた裁判は記憶に新しい。3月25日には東京地方裁判所は、憲法に違反しないという判断を示し、訴えを棄却した。その一方、戸籍法107条では、日本人が外国人と結婚した場合には夫婦別姓を認めていて、法の下の平等の観点ではなんとなく一貫性がないようにも思える。

夫婦別姓が認められていない国もまた、G7各国の中で日本だけなのである。婚姻と同等の関係で自分の姓を変えたくない場合は事実婚を選択するほかないのが現状である。
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文=蓮見勇太

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