ケーブルTVが当たり前の時代には、スポーツファンでもないのに、スポーツ専門チャンネルのESPNに毎月10ドルを取られるような事が起きていた。
ただし、ストリーミングサービスにおいても今後、かつてのケーブルTVと同じことが起こり得る。コード・カッティング(ケーブルTVの解約)ブームが起こって以降、消費者は様々な動画ストリーミングサービスを利用するようになり、ネットフリックスやHuluが台頭した。
その後、アマゾンプライムビデオやHBO、CBS All Access、ショータイムやユーチューブプレミアムも始動した。さらに今後はアップルやディズニー、ワーナーやユニバーサルらが独自のプラットフォームを立ち上げる。
問題は、一つのサービスで全てのコンテンツを観ることが不可能なことだ。ここまで名前をあげた企業らは、オリジナルのコンテンツを用意し、消費者は気がついたら複数のサービスに月額料金を払っているということになる。
デロイトの調査によると、平均的な米国人は現在3つの動画ストリーミングに月額料金を払っている。また、43%がケーブルTVとストリーミングを併用している。多くの人々が、実際に観ることのないコンテンツに料金を支払っているのだ。
これは、かつての時代とまるで同じ状況だ。マスコミが「サブスクリプション疲れ」という用語を使い始めるのも、時間の問題だろう。
一方で、音楽ストリーミングの分野では、状況はもう少しシンプルだ。音楽ストリーミングサービスの大半は、必然的に同じ楽曲を流し、料金も変わらない。大半の消費者は一度使い始めたサービスを長期間に渡り、使い続けている。
スポティファイやアップルミュージックも、独占コンテンツの配信を始めてはいるが、さほどの成果は収めていない。音楽ファンにとって、オリジナルコンテンツの魅力は低いのかもしれない。
しかし、最近になって大手のストリーミング事業者らが、再びオリジナルに力を入れる傾向が見られている。スポティファイはインディー系アーティストや小規模なレーベルの取り込みに、注力している。動画分野で懸念される、サブスクリプション疲れの現象は音楽でも起こるかもしれない。
動画配信ビジネスはこれまで、音楽業界の失敗を参考に発展を遂げてきた。しかし、今後は動画ストリーミングから、音楽業界が何かを学ぶ番なのかもしれない。