ビジネス

2019.04.18 07:30

稼働率は90%を超え、事業は好調。それでも「HOTEL SHE, KYOTO」がリニューアルをした理由


世界観を形にするのは信頼する若き社員たちの仕事

コンセプト作りと時を同じくして、龍崎は資金調達のめどを立て、事業計画書を作り、建築設計・デザインの打ち合わせを進めていた。コンセプトが固まった時点ですぐに内装などの方向性を詰め、3月のリニューアルへ向けて具体的に動き始めた。

新生「HOTEL SHE, KYOTO」では、コンセプトに応じて神奈川の「ビッグ ベイビー アイスクリーム」と作り上げたアイスクリームショップ「BIGBABY ICECREAM KIOSK」を設置しているが、こうしたホテルへのコンセプトの落とし込みを担ったのは、龍崎が信頼を置く若きホテルの社員たちだ。

京都の若き20代の支配人代理がプロジェクト・マネージャーを務め、そのもとで、同じく20代の社員メンバーが発注やコンテンツの仕込みなど担当ごとに現場を仕切る。特に今回は運営をしながらのリニューアルとあって、通常業務と並行しながら、限られた時間・空間での作業となる。家具の入れ替えのためにガレージセールを開催するなど、無駄なくリニューアルを進めるアイデアがいくつも出てきた。

「具体化してからは、基本的にディレクション担当。他の業務はそれぞれ得意なメンバーに任せ、私はほとんど現場にいませんでした」

コンセプトに共感していただける方に来てほしい

3月21日の正式オープンを控え、3月中旬には関係者を招いたお披露目を行った。その感想について龍崎は「特に世界観の作り込みや細部へのこだわりを褒めていただけたのがうれしかったです。サービスはもちろんですが、コンセプトの強いホテルを作れたのかなと。ホテルは日常的に利用する場所ではないですが、『京都に行くならまたここに行きたいな』と思ってくださるゲストが増えてほしいです」と話す。

龍崎がプロデュースするホテルは、世界観を全面に打ち出すことで、ミレニアル世代を中心にファンを獲得しているわけだが、世界観作りにこだわったホテルは徐々に増えはじめ、ホテル市場の競争も激化し始めている。今後、龍崎はどんなホテル経営を目指すのか。

「今までは『レコードのある生活』や『オアシス』などとライフスタイル提案をしてきました。もちろん、それは続けつつ、次はライフステージのあり方を提案していきたいなと。例えば、産後ケアに特化した宿泊施設とか託児所とシェアオフィスを併設するとか、予防医学や福祉に特化するとか。ここにはホテルのさらなる可能性が秘められていると思うんです」



りゅうざき・しょうこ◎1996年生まれ。2014年に東京大学文科Ⅱ類入学。15年、北海道の「petit-hotel #MELON」運営のためにL&Gグローバルビジネスを立ち上げ。その後「HOTEL SHE, KYOTO」や「HOTEL SHE, OSAKA」をはじめ、湯河原の温泉旅館「The Ryokan Tokyo YUGAWARA」や北海道・層雲峡の「ホテルクモイ」の運営を行う。2019年3月に「HOTEL SHE, KYOTO」をリニューアルオープン。

文=角田貴広 写真=延原優樹

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