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2019.04.17

アマゾンの「無料音楽配信」で始まる、広告業界の地殻変動

Nopparat Khokthong / shutterstock.com

アマゾンが音楽ストリーミングの「プライムミュージック」に、広告つきの無料バージョンを追加する計画を進めていると、米ビルボードが4月12日に報じた。

この報せを受けてスポティファイの株価は下落した。今後はアップルミュージックに影響が及ぶことも考えられる。

アマゾンは広告市場で売上を伸ばしており、将来的にはフェイスブックやグーグルの広告事業にも影響を与えかねない。

筆者は今年2月に執筆した記事で、アマゾンの2018年第4四半期(10〜12月)の決算で、デジタル広告が大半を占める「その他」部門の売上が、前年同期比で約2倍の34億ドル(約3800万円)に達したことを指摘していた。

フェイスブックとグーグル(アルファベット)らは同期間にそれぞれ、約170億ドルと約400億ドルの売上を記録しており、アマゾンの広告売上はこの2社に比べれば小さなものだ。しかし、2倍という広告売上の成長率は注目に値する。

アマゾンは消費者の購入履歴データを抱える、世界最大の企業の1社だ。米国のEコマース業界でトップに君臨する同社はこのデータを用い、企業からさらなる広告費用を徴収しようとしている。

マーケティング企業Nanigansのデータでは、米国の小売業者の3社に1社が、フェイスブックやグーグルへの広告費用を減らし、アマゾンへの広告料に割り当てようとしていることが示された。

筆者がマーケティング企業Singularの依頼を受けて、1500名の米国人の広告担当者を対象に実施した調査でも、64%がアマゾンへの支出を増やす計画だと回答した。

彼らはフェイスブックやグーグルに対する広告費用も、増額する意向だったが、アマゾンへの支払額の増加率は突出している。

アマゾンは音楽ストリーミングに広告モデルを取り入れ、広告部門の売上をさらに伸ばそうとしている。ラジオ業界は長年、広告モデルで運営されてきたが、その動きのオンラインへの移行は十分ではない。

一方、スポティファイは広告つきのストリーミングで1億2000万人近い会員を獲得し、比較的速いペースで利用者を伸ばしている。

アマゾンの広告つき音楽ストリーミングは、スポティファイの無料サービスに打撃を与え、有料の利用者数の低下をも招くことになり得る。さらに、アップルやグーグルらの音楽サービスにも影響を与えるだろう。

その結果、アマゾンは競合企業らの広告売上を吸い取ることになる。

アマゾンにとって今後のベストなシナリオは、音声広告がスマートスピーカーのEchoや、ボイスアシスタントのアレクサとうまく連動することだ。消費者らは既に、スマートスピーカーを通じた音声広告に慣れ始めている。

編集=上田裕資

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