フィリップス・エクセター(Phillips Exeter)、アンドーバー(Andover)、チョート(Choate)など、東海岸の名門全寮制高校は相当数訪問していたこともあり、この訪問が衝撃的な経験になろうとは、その時は思ってもみなかった。
イーグルブルックを知ったのは、数年前、ある教育コラムニストの記事で全米トップ5の寮制中学校(junior boarding school)として紹介されていたのを読んだ時である。1922年に設立された東海岸の名門男子校、という響きから、歴史も伝統もあるけれど今の時代から取り残された古臭い匂いさえ漂ってきたのを覚えている。
ところが、キャンパスに一歩足を踏み入れた時から、私の印象は大きく覆されることになる。
大自然の中で育まれる、逞しくも優しい身体と心
イーグルブルックはボストンから西へ2時間、ディアフィールド・アカデミー(Deerfield Academy)という名門高校の向かい側、山の中腹にあった。G6-G9(小6年〜中3年)男子250人が寮生活を営むこの中学は、800エーカー(約98万坪、東京ドーム約70個分)の広大な敷地を有し、キャンパス内にサッカー場や屋内プールだけでなく、スキー場や釣りのできる湖まである。
全米の一部ボーディングハイスクール(高校)は、1000人近い生徒を抱え、日本の大学も顔負けの施設を有することで知られているが、ここは生徒数わずか250人の中学である。
軽い気持ちで大変なところへ学校訪問に来てしまった、と若干気持ちが怯んだのも束の間。キャンパス内で迷子になっていた私を見るなり、まだ表情にあどけなさが残る一人の生徒が、風景写生の手を休めて道案内に来てくれた。
世界中行く先々で評判の学校を訪問するのが趣味のようになっている私だが、イーグルブルックでは、キャンパスを一周して数十人の生徒に会う中で、生徒たちの精悍だが優しさに溢れる瞳が最も印象に残った。
たった一人の日本人生徒
私のキャンパスツアーを担当してくれたのは、全校でたった一人という日本人生徒、桐淵慶さん。さぞかし海外生活が長いのだろうと思って聞いてみると、埼玉県の私立小学校に在学中、高学年からインターナショナルスクールへ転校。中学校2年生から、自らの意思で東海岸のいくつかの学校を受験し、イーグルブルックに編入して来たというから驚いた。