アフリカ系米国人の資産は白人の1割ほど 格差はなぜ縮まらない?

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人種間の資産の格差は2000年代後半のグレートリセッション(大不況)以降、さらに広がっている。大不況が始まる直前の2007年、アフリカ系米国人の資産中央値は(2016年のドルで)2万5841ドル(約300万円)で、白人系の持つ資産中央値18万8756ドル(約2100万円)の13.7%だった。この差自体もひどいものだが、近年はその差がさらに広がっている。

実は過去30年の間に、アフリカ系米国人の資産中央値が白人系の資産の約5分の1以上になったことは一度もない。

人種間の資産の格差は、アフリカ系米国人が組織的に不利な立場に日常的に置かれていることによるものだ。人種による資産の大きな格差は、教育や収入、年齢、配偶者の有無が変化しても変わらない。大学の学位を持っているアフリカ系米国人の2016年時点での資産中央値は5万7250ドル(約640万円)だったが、大学の学位を持たない白人系の資産中央値は8万1650ドル(約910万円)だった。

つまり、資産格差の原因としてよく挙げられる標準的な経済的・人口学的要素では、この大きな格差は説明できない。特定の仕事への誘導や居住地の隔離、あからさまな差別などの要素も、アフリカ系と白人系の資産格差に常に影響を与え、大きく寄与している。

アフリカ系米国人が資産の形成・維持において組織的な障壁に直面していることは、2007~09年の経済・金融危機時にアフリカ系の資産が大きく下がったことからも示されている。アフリカ系米国人の資産は住宅資産に大きく集中していたため、経済・金融危機の間は白人系に比べて資産が急落した。

つまり、アフリカ系米国人は白人と比べ、家以外の資産が少なかったということだ。その理由は多くの場合、アフリカ系の人が低給な仕事に従事していることや、白人系と比べて退職手当などの手当が少ないことにある。

またアフリカ系米国人は、白人系よりもはるかに高い失業率に早い時期から長期間にわたり苦しむことが常だった。貯蓄に大きく頼らなければならない時期が長く続いたアフリカ系米国人は、経済危機後に資産を再構築するのに苦しんだ。

アフリカ系と白人系米国人の資産格差は非常に大きいため、持続的で大規模で、的を絞った政策介入が必要となるだろう。それが実現されなければ、平等な機会を提供する約束は、アフリカ系米国人にとって空約束のままだ。

翻訳・編集=出田静

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