このことは、アフリカ系と白人系米国人の資産に大きな格差があることからも露骨に示されている。
アフリカ系米国人は白人の持つ資産のほんの一部しか持たないため、緊急時への備えがはるかに少なく、より良い地域に引っ越したり、起業したり、子どもたちを大学に通わせたりといった未来への投資のリソースが少ない。その結果、アフリカ系米国人が貧困から抜け出し裕福になるケースは白人と比べてはるかに少なく、高齢になってからはさらに苦労しがちだ。
資産とは、家族が所有するもの(家、会社、退職貯蓄、銀行口座など)から家族が借りているもの(住宅ローン、クレジットカードローン、学生ローンなど)を引いた差のことで、複数の目的で役に立つ。1つ目は、病気やレイオフ(一時解雇)、離婚などの緊急事態に思いがけず直面した場合だ。収入が急に落ちコストが上がった場合には、当座預金口座や貯蓄口座だけでなく退職貯蓄も活用し、緊急手段とすることができる。
2つ目に、資産は家族の未来に投資する手段でもある。貯蓄は家の頭金や起業資金、今より良い仕事が回ってきたときの転職資金、子どもたちの教育費などに使うことができる。資産は、家族がより多くの経済的機会を手に入れるために欠かせないものだ。
3つ目として、資産を活用すれば安全な退職後の生活を楽しむことができるし、健康上の問題や家族の世話などを理由に退職を決めたり、ボランティアの機会を追求したりすることもできる。
しかし、資産の配分は非常に不平等で、その差はますます広がっている。アフリカ系と白人系米国人の間では、その格差が特に大きい。退職前のアフリカ系米国人が2016年時点に持っていた資産中央値は1万3460ドル(約150万円)だったが、これは同じ時期に白人系米国人が持っていた資産中央値14万2180ドル(約1600万円)のわずか9.5%だった。