キャッシュレス社会に必要なのは、ユーザーの「感動体験」だ

Photo by Justin Sullivan/Getty Images

私はミッションクリティカルシステムの開発・運用を行うIT企業TISで、一貫してペイメント(支払い決済システム)業界に関わっています。システムエンジニアとして取引先であるカード会社のさまざまなプロジェクトを担当しました。

この連載では、クレジット・デビット・プリペイドの3つのペイメントサービスの開発・プリセールス・企画と経験を積んだ私ならではの視点で、ペイメント業界の最近の変化について述べさせていただこうと思います。

Apple Payがペイメント業界に革新をもたらした

今でこそ雑誌やニュースなどでペイメントに関連する話題に触れる機会は増えましたが、個人的には2016年のApple Payから変化の兆しがあったように感じています。もともと、2014年に米国で始まったサービスが日本に上陸すると知った時は、何かこれから日本のペイメントの新しい時代がくるかもしれないと身震いしたことを覚えています。

Apple PayはiPhoneをかざすだけで電車の乗降車が出来るようになったり、iPhoneまたはAppleWatchをかざせば決済することが出来たりする利便性が注目を集めました。当然そういった要素もApple Payならではですが、開発者にとっては、安心安全を支えている「トークナイゼーション」が画期的な技術だったと思います。

トークナイゼーションとは、16桁のカード番号を別の番号(トークン番号と呼びます)に変換し、スマホ決済であれば、スマートフォンの中にトークン番号を登録する仕掛けです。プラスチックカードを紛失した場合は、コールセンターに電話し、カードを停止させ、再発行の手続きを行います。再発行されたカードは別のカード番号になりますので、そのカードを公共料金の引き落としなどに使っていた場合は、再手続きが必要になるでしょう。

では、カードを登録したスマートフォンを紛失した場合はどうなるでしょうか。スマートフォンには、別のカード番号が入っていますので、手持ちのプラスチックカードのカード番号が漏洩することにはなりません。スマートフォンに登録したトークン番号の利用を停止することで、プラスチックカードを再発行することは必須ではありません。

モノに安全な形でカード情報を登録するトークナイゼーションが生まれたことにより、スマートフォン以外にECサイトをはじめ、ウェアラブル、IoT家電、コネクテッドカーへの活用がますます進むと思われます。
近い将来1つのカード番号につき数百のトークンが発行されるでしょう。
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文=鈴木翔一朗

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