アメリカの百貨店ノードストロームのウェブショップにおけるアイビーパークの過去の売上実績をもとに、今後の成功を占えば、アディダスのEコマース売上はさらに上昇する可能性がある。
市場調査会社「スライス・インテリジェンス(Slice Intelligence)」によると、ビヨンセが所有するアイビーパークは2016年春にローンチされたが、その直後の1週間の売上は、ノードストロームのサイトでトップに立った。ナイキを抜き去ったほか、その購買力は、セレブ御用達のヨガウェアブランド「ビヨンド・ヨガ」がリリースされたときの8倍だったという。
インフルエンサー・マーケティングに賭けるアディダス
ビヨンセはアディダスと提携することで、アディダスとコラボブランド「Yeezy」を発表しているカニエ・ウェスト やファレル・ウィリアムスの仲間入りを果たすことになる。
2016年9月に行われたYeezyの4シーズン目のファッションショー(Getty Images)
興味深いのは、アディダスがYeezyをリリースした当初と同じ戦略でアイビーパークを売り出すかどうかということだ。Yeezyの場合、リリース当初はシューズの希少性を高めて話題性を生み出し、市場を拡大してから商品をさらに投入するという手法が取られた。
アディダスの最高経営責任者(CEO)カスパー・ローステッド(Kasper Rorsted)は2018年11月、2018年実績のハイライトとしてYeezyを挙げた。Yeezyは、同年第3四半期にEコマース売上が76%増と大躍進を遂げた立役者のひとつになったという。
アディダスで売上好調だった部門は主に、2桁台の伸びを見せたD2C(Direct-to-Consumer=自社で企画・製造した商品を消費者に直接販売するビジネスモデル)に支えられていた。とりわけEコマースが好調で、2018年の売上は36%増えて20億ユーロ以上に達した。
ただし、スポーツと関係のないインフルエンサーを巻き込んだところで、彼らの熱心なファンではない消費者のあいだでも同社の人気が急上昇するかどうかについては疑問が残る。RBCキャピタルマーケッツ(RBC Capital markets)によると、スポーツ用品業界全体は2019年、10%ほど成長すると予測されている。
RBCキャピタルマーケッツは、アディダスの2019年の製品戦略において、Yeezyが巻き起こした熱狂が「大衆化」されたかたちで柱になると予測していた。この予測はもちろん、ビヨンセが仲間入りをする前の話だ。