シティカルチャーが企業戦略へと織り込まれる時代が続くなか、最近のアディダスは、スポーツよりもむしろファッションに依存しようとしてきた。スポーツを取り巻くカルチャーの重要性が高まり、収益性も増しつつあるなか、スニーカー市場の行方は、アディダスにとって大きな賭けとなっている。
頭に入れておくべきは、スニーカーとファッションが、独占性と話題性にしばしば依存する業界だという点だ。「カルチャーバンクス(CultureBanx)」は2018年11月、アディダスの2018年売上が予想に届かなかったという記事を掲載した。そして、アディダスの最大の問題点は、「スポーツよりファッションに重点を置いたこと」ではなく、マーケティング手法にあるという意見を紹介した。
アディダスは、インスタグラムのフォロワー数が1億2600万人にも上るビヨンセと提携したことで、勢いのあるインフルエンサー・マーケティング に舵を切ったと言えるだろう。インフルエンサー・マーケティングの市場規模は10億7000万ドル(約1198億円)だが、2019年には23億8000万ドルと、2倍以上の成長を遂げる見通しだ。
ビヨンセは自らのブランド「アイビーパーク」を、イギリス小売業界の大物で、ファッションブランド「トップショップ」のオーナー、フィリップ・グリーンと共同創業したが、同氏のセクハラ疑惑が浮上すると、ブランドすべてを買い取り、100%の所有者となった。
ビヨンセとの提携を発表した後、アディダスの株価は1.5%近く上昇した。ドイツに本社を置くアディダスは、直近四半期における北米での売上が16%増と順調な伸びを見せており、ナイキが幅を利かせるアメリカ市場に切り込んでいる。