ウーバーはiPhone誕生から2年後の2009年、タクシー業界で切に必要とされていた破壊をもたらし、大手テクノロジー企業の仲間入りを果たした。同社は当初、テクノロジー好きの層に対して黒塗りの高級車によるサービスを展開し、比較的ゆるやかな成長を続けていた。だが2013年、「ウーバーX」の導入により、その状況は一変した。
ウーバーXによって、比較的新しく整備の行き届いた車と運転免許証、そしてフリーランス契約を結べる程度にクリーンな経歴を有する者であれば、誰でもウーバーの運転手として働けるようになった。グーグルは同年、ウーバーに2億5300万ドル(約280億円)を投資。これは株式の5.2%にあたり、上場によりその価値は約50億ドル(約5600億円)へと膨れ上がる可能性がある。
その瞬間から、都市交通は変化を遂げた。当初は交通事故や客とのトラブルの増加が懸念されたが、ドライバーが良い顧客サービスを提供したくなるシステムのおかげで、そうした懸念が現実のものとなることはなかった。利用者側はすぐに、ウーバーのドライバーたちが四つ星や五つ星の評価を維持するために従来型タクシーよりも優れたサービスを提供していることに気付いた。
ウーバーはまた、多くのタクシーがクレジットカードでの支払いすら拒絶する中、アプリを通じた支払い方法を提供。この仕組みは、競合他社が模倣するのに何年もかかった。
ウーバーのトラビス・カラニック共同創業者の「何でもあり」の方針は、黎明期の会社に急速かつ精力的な成長をもたらしたが、カラニックは同社に対して長い間影を落としてきた。カラニックは上場によって多額の富を得ることになるものの、彼のアプローチはセクハラや、成長持続を目的としたジャーナリストや公務員の密偵といった有害な企業文化を生み出した。
トラビス・カラニック(Getty Images)
この文化は実際の問題を生み、訴訟や罰金、さらには人材離れにつながった。この状況はカラニックが最高経営責任者(CEO)を辞職し、ダラ・コスロシャヒに交代するまで続いた。経験豊かな経営者で融和的な気質のコスロシャヒは、カラニックとは非常に異なるアプローチでウーバーを運営してきた。