蚊がサウンドでコミュニケーションを行うことは以前から知られており、マレーシアのサラワク大学のHamady Diengらは、轟音でEDMの楽曲を流せば蚊のコミュニケーションを妨害できると考えたという。
彼らがなぜ、スクリレックスの楽曲を選んだのかは明かされていないが、一部の報道によると「音量やピッチが実験に用いるのにふさわしい」と判断したからだという。
研究の対象としたのはデング熱を伝染させるネッタイシマカで、この蚊は黄熱やジカ熱の伝染病ウイルスを運んでいる。「ScienceDirect」に掲載された論文では「サウンドが、蚊が仲間や血を吸う対象からのシグナルを受け取ることを妨げる」と述べられた。スクリレックスの曲を聞かされた蚊は、そうでない蚊より活動が鈍くなり、血を吸う行為や交尾数が減ったという。
しかし、音楽で蚊の活動を鈍らせるというアイデアに、疑問を呈する科学者もいる。ロンドン・スクール・オブ・ハイジーン & トロピカル・メディスンのJames Logan教授は「蚊の活動の妨げになるほどの大音量で音楽をかけるのは、夏の音楽フェスティバルのような状況下でしか考えられない」と話した。
スクリレックス自身もこのアイデアには納得がいかないらしく「エイプリルフールのジョークみたいな話だ」と、ツイッターに投稿を行った。ただし、今回のニュースが拡散したことで、2010年にリリースされたこの楽曲のユーチューブ動画の再生回数はみるみる上昇し、コメント欄には「これが蚊たちが大嫌いな音楽だ」といった投稿が相次いだ。
スクリレックスのファンたちにとって、彼の楽曲に蚊よけ効果があるというのは嬉しいニュースかもしれない。しかし、Logan教授はその効果を信頼しすぎないほうがいいとアドバイスする。
「蚊よけ対策としては、もっと現実的な方法を選ぶことを私は薦める」と教授は述べた。