プレゼントを贈るとき、相手の方に心から喜んでもらう品を考えるというのは、なかなか至難の業だろう。特にお中元やお歳暮などが形骸化しているいま、「わ、こんな素敵なものを!」と驚いてほしければ、それなりの工夫が必要になってくる。僕の場合は、自分がいいなと思った品に、ちょっとだけオリジナル性をプラスして贈ることにしている。
2017年は「京・西陣 孝太郎の酢」による体験・販売「Myぽん酢」をつくった。橙、かぼす、すだちとの3種の果汁と出汁を自分好みでブレンドし、世界でたったひとつのポン酢をつくるというアイデアは唯一無二だし、いったん作成したレシピで何回でも注文可能。お鍋の時期にさりげなく渡すと、非常に喜んでもらえた。
同じく京都だが、「京菓子司 末富」で販売されている小さい麸焼き煎餅「京ふうせん」が好きで、これに自分の焼印を押したオリジナルをつくり、バレンタインの返礼として贈ったこともある。
18年は、愛知県の「ヤマサちくわ」とコラボして、「巻物竹輪」のサンプルを完成させた。そもそもの始まりは、僕がラジオパーソナリティを務めるTOKYO FM「ブリアサヴァランの食卓」で、文政10年(1827年)創業、7代目社長の佐藤元英さんと行った対談だ。
僕は竹輪が大好きなのだが、何が好きって竹輪の皮が好き(笑)。そこで、竹の棒に皮を巻き付け、巻物風にした製品を開発してもらったのだ。「よかったら“薫堂巻き”という名前にしてください」と半分冗談で言ったところ、「そうしましょうか」と返事をされたので、本当に薫堂巻きとして製品化するかもしれない。そうなればいろんな方に手土産として持参したいと思う。
気持ちの通じ合った、あの人へ
「粋なプレゼント」というと思い出すのが、高倉健さんだ。
時計好きの健さんは、気持ちの通じ合った共演者や友と認めた人に、ロレックスなどの高級腕時計に自らの名を彫ってプレゼントする習慣があったという。映画『ブラック・レイン』で共演したアンディ・ガルシアもそのひとりで、健さんが長年愛用していた私物のロレックスを受け取っている。バックルには筆記体でKenと彫られていたそうだ。素敵すぎますね。
実は僕もある企画の打ち合わせで健さんと何度かお会いする機会があり、「企画が成功したら、伝説のあの時計をもらえたりするんだろうか」なんて妄想を膨らませていた。残念ながら一緒に仕事をすることは叶わなかったけれど、健さんからは、ご自分が気に入っているという福岡の店のドリップコーヒーを送っていただいた。そのお心遣いがとても嬉しく、一杯一杯を大切に飲んだことを覚えている。
さて、僕も気持ちの通じ合った仕事仲間や友と認めた人へ何か特別な品を贈りたい! と思い至り、試行錯誤してたどり着いたのが、EYEVANとコラボしたサングラス&伊達メガネだ。
EYEVANは防塵用メガネを主に製造していた山本光学が、石津謙介さん率いるヴァンヂャケット(VAN)と1972年に共同で設立した、日本初のファッションアイウェアブランドだ。
EYEVANの山本典之社長と懇意になって、相談したところ、僕が月1回ショップに行って「◯◯さんにはこれ」と一点ずつ選び、オリジナルのケースに入れ、サングラスなら「You need sunglasses because your future is too bright.」というメッセージカードを添付し、一澤信三郎帆布でつくってもらったオリジナルのバッグに入れて、誕生日に贈ることになった。
「健さんのロレックス」とは桁が違うが(笑)、中学時代、バスケットボールの練習の際にVANのTシャツを着ていた僕にとっては、自分がもらっても嬉しい、僕なりの特別なプレゼントだ。