同業のリフトが3月29日に上場したものの、その後は株価が急落しているためだ。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によれば、ウーバーの上場時の時価総額は、昨年の時点で見込まれていた額より200億ドル(約2兆円)安くなる見通しだ。
上場にあたっての主幹事であるモルガン・スタンレーとゴールドマン・サックスは昨年、ウーバーの時価総額は1200億ドルに達する可能性があるとの見方を示していた。
ただ、それでもウーバーが上場を果たせば、2010年7月のシードラウンドで同社に出資した人たちにとっては悪くない話になるだろう。ビジネス・インサイダーによれば、9年前の同社の評価額は400万ドルだ。およそ2万5000倍に増えることになる。
(筆者は本記事で取り上げる企業いずれの株も保有していない)。
今後への懸念
ウーバーが提出した目論見書によれば、同社はかなりの赤字を出している。昨年の売上高は前年比43%増の約113億ドル(2017年は同103%増)となったが、営業損失は30億ドルもの高額に上った。
ブルームバーグによると、昨年の同社の純利益は9億9700万ドルだったが、これは東南アジアとロシアで資産を売却したことによる「一時的」な収入によるものだ。さらに、保有する中国ライドシェア大手の滴滴出行(ディディチューシン)の株価が上昇したためでもある。
リフトの株価は上場初日に急伸して以降、30%近く下落している。同社は昨年、売上高がおよそ20億ドルに上った一方、損失が9億ドルを超えた。米国のライドシェア市場で、ウーバーのシェアは約70%。残る3割を握るのがリフトだ。
ウーバーに関して最も目を引くことの一つは、その規模にもかかわらず、同社が持続可能な競争上の優位性に欠けるということだ。パーソナルモビリティ、ウーバーイーツ、ウーバー・フレイトを含むいずれの事業でも、同社は激しい市場競争にさらされている。
激しい競争は大きな懸念事項だが、最も深刻な問題は、ウーバーにはスケーラブルなビジネス・モデルがないことだ。つまり、近い将来に利益を上げるようになる可能性は低い(公平を期するために言えば、同社の「不採算性」は創業当時に比べれば低下している。2014年の営業費は売上高の230%にまで上ったが、昨年は127%だった)。
残念ながら、目論見書には公開価格は記載されていない。ただ、WSJによれば、ウーバーは転換社債の保有者に対し、1株当たりの価格が48~55ドルとする計画であることを明らかにしたという。これを基に算出すれば、同社の評価額は900億~1000億ドルだ。
ウーバーの価値を760億ドルと評価し、昨年同社に追加出資したトヨタにとっては、時価総額が1000億ドルでも悪い結果ではないだろう。価値が1年で32%上昇したことになる。
ウーバーが株式公開を急ぐ理由は理解できる。だが、「減速」し、赤字を出し、手元資金を減らし、競争上の優位性に欠ける企業の株を買わなければならない理由は見当たらない。