その答えはそれほど困難なく出せるだろう。しかし、もし10万個の商品のサイズが違っており、さらに「ポテトチップスとミネラルウォーターを一緒にしてはいけない」といった条件が重なった場合、何秒以内で最適解を導き出せるか。
これはアリババのエンジニアが日々直面する問題の1つだ。こうした問題は通常、従来のツールでは完全に解決することは難しい。一方で、人工知能がこうした問題の解決の可能性を引き上げる。こういったことが、人工知能が起こしうる「革命」の一つだろう。
働くAIロボットたち──「魯班」「天巡」「達霊」
2018年の「双十一」(11月11日「独身の日」、中国では最大のネットセールがこの日に行われる)で、アリババは過去最高となる1682億人民元(約3.5兆円)の売上を記録した。その背後には、人工知能ロボットから構成されたチームがいた。
AIデザイナーロボット「魯班」は1秒間に8000枚もの異なるタイプのバナー広告をデザインし、運用メンテナンス用ロボット「天巡」はデータセンターの運用メンテナンススタッフ30%分のルーティンワークをこなした。またデータセンターAI指令担当ロボット「達霊」は、コンピューティングリソースの割り当てを最適化し、異常なサーバーを素早くロックし、すべてのシステムのスムーズな動作を保証した。
現在、アリババはこうしたチームのレベルアップを図り続けている。現在バージョン変更中の「淘宝App」トップページには、「猜你喜歓(あなたへのおすすめ)」「有好貨(チェックしたい商品)」など、個人の消費行動に応じた商品を勧めるモジュールが設けられている。
以前は、各モジュールにサーバー数を手動で割り当て、動作状況を監視する必要があった。前出のデータセンターAI指令担当ロボット「達霊」が出てくる前の「双十一」では、20人近くのエンジニアがこうした作業を担当し、かつチームリーダーを置き、コマンドの調整を行っていた。それでも、リソースの利用率は低かった。
去年、試験的に導入された「達霊」が手動作業に完全に取って代わり、資源利用率を2倍に引き上げた。これは、半分の省力に成功したことを意味する。この成功後、「達霊」システムはAutOPTにも導入された。
かつて、人工知能システムには多くのパラメータ調整作業が必要だった。ひるがえって、このプラットフォームでは自動パラメータ調整の問題が解決されたばかりでなく、速度も大幅に上昇した。
人工知能が多くのニーズに対して迅速にシステム調整を行い、意思決定シーンでの応用の可能性をもたらしたのだ。
章禎梁氏はこの技術のアップグレードの裏側にいるキーパーソンの1人だ。今年29歳になる章禎梁氏はアリババ達摩院の機器インテリジェントテクニカル実験室の人工知能意思決定部門で働く社員だ。彼は機械の学習や基本的なアルゴリズムの理論研究と製品化について主に研究している。具体的には新場面におけるAIアルゴリズムの応用について担当している。
章禎梁氏の肩書きは華やかだ。コロンビア大学で客員教授を務めるほか、IEEE(アイトリプルイー)の出版部門で副編集長も務める。
彼は現在、ネットワークリソースのスマート化計画を担当する。またクラウドコンピューティング分野で、コンピューティングリソースをリアルタイムで調整したり、配置したりするといった業務をしている。データと人工知能アルゴリズムを通じて、既存のリソースの安定性、コスト管理、耐災害性を大幅に引き上げることができるという。
章禎梁氏は今年、フォーブス中国が科学分野で選んだ30歳以下の精鋭リストに入った。「若くて有望で、学術をリードする」。これはランクインする者に対する共通のお墨付きだ。章禎梁氏は中国科学技術大学ジュニアクラス(学士)を優秀な成績で卒業した。そして、コロラド州立大学に留学し、物理学修士課程、コンピュータエンジニアリング博士課程で学んだ。卒業後、章禎梁氏はクアルコムのニュージャージー研究開発センターや、インテルの実験室で勤務した。