ヒュッゲの次は「ラゴム」 スウェーデン流の幸せな生き方

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筆者:ヒュッゲが流行したときには、世界中の人がクッションやキャンドルを買いに走りました。スウェーデン人以外の人がラゴムを毎日の生活に取り入れるためのコツは何でしょう?

オーケストロム:ラゴムの素晴らしいところは、その中の最高の部分を選んで自分の文化に組み入れ、混ぜ合わせられるところ。私自身を例にすると、自分が話す量を減らし、直接関係する情報だけを伝えることで、聞き上手になれました。

健康面に関しては、以前よりも誘いを断れるようになり、断ったことに罪悪感を持たなくなったのが重要な変化。家には本当に必要なものか、好きなものしか置かず、加えるものについてはより意識を持って考えるようになりました。

筆者:スウェーデンの考え方でラゴム以外に実践しているもの、あるいは避けているものはありますか?

オーケストロム:ラゴムの最大の強みはマインドフルネスです。ラゴムによって人はマインドフルな人間になり、自分の下した決断がその時々の状況で最善かつ、自分が暮らすコミュニティーにとっても最良なものかどうかを常に問いかけるようになります。

また私は本の中で、ラゴムのデメリットの一つとして、周囲からのしっかりとした承認がないことを挙げました。ラゴムの考え方を実践すると、周囲の人に迷惑やストレスを与えないよう自然に距離を置くようになる。そのため中心グループの周りには感情的・社会的な強い壁が築かれてしまい、それを乗り越えるのが非常に難しいこともある。

これにより社会では深い孤独感が生まれ、自分は仲間はずれで文化に完全に溶け込めていないと感じることもある。私がしょっちゅう言っているのは、スウェーデンは極端にプライベートで閉鎖的な人が営む極端にオープンな社会だということ。

また私は本の中で「ヤンテ」という別の考え方についても触れました。これは、ラゴムを取り巻くネガティブな要素です。

ラゴムは個人の生活からストレスを取り除こうとしますが、一方のヤンテは社会からストレスを除こうとします。2つともすることは同じですが、状況が変われば良いものにも悪いものにもなる。ヤンテはストレスとされるもの(違い)を取り除いたり減らしたりして、全員を同じ状態に維持することで、北欧の社会を均一で調和の取れたものにしようとします。

ありがたいことに、ヤンテは少しずつ社会やスウェーデン人の考え方から消えつつあり、人々は自分らしい最高の生活を送れるようになっています。個人レベルでのラゴムは推進されているけれど、集団主義的な意味では徐々になくなっています。
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編集=遠藤宗生

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