AMIのデービッド・ペッカーCEOはトランプの長年の親友で、ポルノ女優や元モデルからの不倫情報のもみ消しに関与したとされている。エンクワイアラーは今年2月には、アマゾンのジェフ・ベゾスの不倫スキャンダル記事を掲載し、ベゾスと女性ニュースキャスターのローレン・サンチェスとの間でやりとりされた私的メールを暴露していた。
ナショナル・エンクワイアラーの買収候補に名乗り出たのが、同紙の創刊者の息子のポール・デイビッド・ポープだ。彼の父のジェネローゾ・ポープ・ジュニアは1988年に死去し、その後AMIが約4億ドルでエンクワイアラーを買収していた。
デイビッド・ポープはいくつかの企業と連携し、AMIを買い戻す意向だという。彼はペッカーについて「気味の悪い男だ」と語り、ペッカーの無様な敬遠手腕がエンクワイアラーを没落させたと述べている。
ポープによると、彼の父がエンクワイアラーを率いていた当時は、週あたりの発行部数が550万から600万部程度だったという。しかし、昨年の発行部数は25万部まで低下し、AMIは7200万ドルの損失を出していた。
エンクワイアラーの苦戦はオンラインにおいても明らかだ。comScoreのデータによると、競合のメディア企業のMeredithが運営するPeople.comの月間ユニークビジター(MUV)は7500万人に達している。それに対し、エンクワイアラーのサイトのMUVは58万人程度とされている。
この分野の競合にはTMZ.com(MUV 3400万人)や、Usmagazine.com(同830万人)などもあげられる。
People.comを運営するMeredithや、TMZ.comを傘下に持つワーナーメディアがエンクワイアラーの買収に関心を示すとの見方も浮上したが、アナリストらはその憶測を否定した。投資会社ユカイパを運営する大富豪のロナルド・バークルが、買収に名乗り出たとの報道も流れたが、「ありえない」とユカイパの広報担当は否定した。
サウジ政府との関連説も浮上
競合らがエンクワイアラーの買収を敬遠する大きな要因の一つは、広告メディアとしてのブランド価値があまりにも毀損したからだ。トランプの不倫のもみ消しに関与されたとされる、エンクワイアラーに広告を掲載したがる大手クライアントはいない。
ペッカーは、アマゾンのジェフ・ベゾスからも、彼を脅迫したとして告訴されている。ベゾスによると、ペッカーはベゾスと不倫相手の親密な写真をエンクワイアラーの紙面で公開すると脅したという。
ベゾスの弁護士によると、彼のスマートフォンから写真を盗み出したのは、サウジアラビア政府の諜報機関であり、AMIはサウジアラビア政府と結託してベゾスを窮地に追い込んだという。ベゾスが保有するワシントン・ポストは、ジャーナリストのジャマル・カショギの暗殺にサウジ政府が関与したとの報道を続けており、これに対する報復としてサウジ政府がハッキングを行ったとベゾス陣営は主張している。
ペッカーはサウジ政府関係者とも、親しい間柄だったと報道されている。