ビジネス

2019.04.15

スタートアップ、資金調達の舞台裏──若手起業家は何を考え、投資家と話をするのか


「当時、お金もあまりなかったので福岡から東京までヒッチハイクをしたのですが、その時に僕を乗せてくれたおじさんが、リード投資家であるネットエイジの西川さんの知り合いだったんです。彼に出会わなかったら、いまだに僕は資金調達の機会に巡り会えていなかったかもしれません」

二人
左から、PoliPoli代表取締役CEOの伊藤和真と、タイミー代表取締役CEOの小川嶺

資金調達に対して戦略的・意欲的に行動しているのが小川だ。タイミーではこの8カ月で3度もの資金調達を実施。しかも調達額も、少しずつ増加している。

「慣れない頃は40社を回ってようやく投資にこぎつけたこともありますが、最近は成長度合いを評価されるようになってきている気がします。

資金調達のたびに、自身の能力が上がっている気がするんです。資金調達は、会社の良さを伝える、投資先との1on1。自社の意義を考え抜き、それをロジックを駆使して伝えるとても面白い機会だと思います」

例えば、今年1月に実現したサイバーエージェントの若手経営者の応援を目的とした投資、いわゆる「藤田ファンド」からの調達の際には、「ほかの経営者に比べていかにインパクトを与えるか」を意識したという。

「藤田さんと話したのは、ベンチャー起業家が30人くらい集まった飲み会でしたが、みんなが藤田さんにガンガン話しかけていたので、単にアタックするだけでは覚えてもらえないと思って。

そこで、会場ではあまり時間を取らないようにしたんです。『あなたから1億円いただければ、今回の調達を終えることができます!」とだけ話して、二次会のタイミングですぐに『先ほど話した者です』とメールを送りました。サービス内容についてはほとんど説明しませんでしたが、それでも藤田さんは覚えてくれていたようで、後日秘書の方から連絡をいただきました」

投資家が見ているのは、「事業をやりきることができるかどうか」

では、投資家側は起業家のどのような点に着目して投資の可否を判断しているのか? 今回のイベントを主催しており、PoliPoliとタイミーにも出資しているF Venturesの設立者である両角将太は、その判断軸をこう説明する。

「事業内容よりも『人』を見ていますね。特に大事なのは、事業を最後までやり遂げることができるかどうか。

伊藤さんには過去に登竜門のイベント運営を手伝ってもらったときの経験から、小川さんは一度事業を運営していたい経験がある上に、学生起業家の頃には『自分のやりたい事業ではないから』という理由で資金調達を断っていたことから自分で決断し、やり抜く力があると判断しました」

実は、ベンチャー投資においてサービス内容よりも本人の意思が重要だと考える投資家は少なくない。その理由は、特にシード期の事業は大抵失敗するからだ。

その時に命運を分けるのが、創業者の意思。事業が想定通りの結果にならなくても、投げ出さずにピボット(方針転換)して再スタートできるのか。利益が出ず、メンバーもさっていく辛い状況の中でそうした決断をできるかどうかは、起業家の胆力にかかっているのだ。

最後に、小川はイベントに来場した未来の「事業家」たちにアドバイスを送った。彼がちょっとした隙間時間に自分に合った仕事をできるタイミーを始めたのは、彼が時間の使い方を強く意識しているからだ。

「祖父が亡くなった際に、人が持つ時間は限られていると感じるようになりました。弊社では時間の価値を、『レコメンド=どれだけたくさんの選択肢を提供できるか』と『ストック=時間の価値をどれだけ高められるか』で捉えています。

この考え方をヒントに、こうしたイベントの際にも常にその時間で何を得るかを考えてほしい。後悔のない時間の使い方を、選んでください」

文=野口直希 写真=F Ventures提供

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