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2019.04.12

日本の高級ミニバン・アルファード 海外での評価は?

トヨタ アルファード

15年ほど前、フランスの人気俳優ジャン・レノが、トヨタ・アルファードのテレビCMに出演した。このとき、「国内専用モデルのCMに外国の俳優を出すことで、国際的な味をつけようとしてるのかな」と思った人もいるかもしれない。しかし、このジャパネスクな高級ミニバンが、国内専用モデルだと思っていたら大間違いだ。

実は3台目として登場した同ミニバンは、中国、ロシア、バーレーン、オマーン王国、スリランカ、ベラルス、そして東南アジアでも販売されている人気者。それに、1代目、2代目は平行輸入でイギリスなどにも行き渡っている。

日本でのアルファードは、お父さんでもお母さんでも簡単に運転ができる、オールマイティで贅沢な家族の空間というイメージだ。三世代家族でドライブができ、子供の学校やサッカー練習への送り迎え、買い物などに良く利用される。立って着替えができるのがいいと言う。また一部では、企業の役員の移動手段として使われている。

一方、海外での主な使い方は少し異なる。では、どう使われ、どう評価されているのか。探ってみよう。

どの国の試乗記を読んでみても、はっきり伝わってくるのが、アルファードに対する評価が高いということ。欧米のカーメーカーもミニバンを作っているけど、スタイリングはともかくとして、アルファードの信頼性、質感、機能性、コストパフォーマンスにはかなわない。

こうした特徴は、特に中近東で評価が高い。何より、気温が50度を超えるような環境で信頼性が抜群だから。当然、中近東仕様は、日本仕様よりもエアコンの耐久性レベルが一段と上がっているわけだけどね。外は55度でも、室内はマイナス30度となる快適な25度を保っていなければならない。

アルファード

中近東は色々な意味で特殊な環境だ。普段、ロールスロイスやメルセデス・ベンツ、またはフェラーリやランボルギーニみたいなスーパーカーに乗っている裕福な人でも、実際は家族用にアルファードを選択する傾向がある。何よりも高級感と信頼性がいいからだと言われている。

この地域では信頼性がとにかく大切だ。砂漠を走行しているときにクルマが壊れたら、多くの人はそのまま放置して新型車を買い直すほど。トヨタは中近東一、いや世界一の信頼性だと評価されているからこそ、アルファードのようなクルマに頼る人が多い。

一方、マイナス20度まで冷えるロシアでも、同様に壊れない暖房設備とクルマ自体の信頼性が問われるので、アルファードは高く評価される。また滑りやすい路面の多い地域では、アルファードの4WD仕様も良く売れるらしい。室内の空調とは別に注目される部分は、フル装備でキャプテンシート搭載のエグゼクティブ・ラウンジ仕様。キャプテンシートがピーンとこない人は、飛行機のビジネスクラスの座席を思い浮かべてほしい。

これだけの装備と高級感を完備しているので、富裕層の中には、ドライバー付きリムジンというか、送迎車や移動事務所として使う人も多いようだ。

アルファード

この前、ジュネーブに取材に行った時に、欧州や中近東でアルファードに乗った同僚に聞いてみた。イギリス人の同僚からは、「おもてなし」という言葉が出てきて驚いた。

「実際に乗ってみると、結構速いし、静かだし、乗り心地抜群。VWやメルセデスのミニバンと比べて、走り、機能性、高級感が優れていて、日本式の「おもてなし」がじわじわと伝わってくる。それに、パワーミラー、パワーシート、パワーリアドア、パワーサイドドア、パワーリアシート……とパワー全開。シートヒーターや自動ブレーキ、パーキングセンサー、シートごとカップホルダーなども含めて機能も120%だ。やはり、このクルマは偉いよ。しかも、何度使っても、どんなに暑く寒い環境でも、電動メカニズムが壊れないのが良い。レクサスでも採用しているような安全装備が付いているので、安全性もこのクラスのトップレベルだ」

イタリア人の同僚は、主にデザインについて意見する。

「『アル』なんとかという名前の響きが少し中近東っぽい感じがするね。ルックスは決して美しくないというか、スタイリッシュではないね。グリルが大型スーツケースより大きく、マッチョで存在感があり、見た目は映画「トランスフォーマー」から生まれたかのよう。ちょっとした刺激を与えるだけで、一瞬にして10階建てビルと同じ大きさのロボットに大変身するような雰囲気がする」

アルファード

ドイツ人は、そのフル装備はもちろんのこと、エンジンのバリエーションも褒めていた。

「300ps出るV6仕様があるけど、4気筒ハイブリッドで十分だと思う。トヨタはリッター18kmは走れると言うけど、リアルワールドでの燃費はなかなか10km/Lを超えないのは寂しい。でも、車重は2200kgを超えているからしようがない。700万円以上する価格は、高級ミニバンというより、完全な高級車だね」

スタイリングはともかくとして、どの同僚に話しても、アルファードの信頼性、耐久性、質感、装備、乗り心地が業界のトップレベルとして、しっかりとニッチを切り開いていることを高く評価した。電源も取れるし、動くオフィスとして利用したい人には、ぴったりだろう。

国際モータージャーナリスト、ピーター・ライオンが語るクルマの話
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文=ピーター・ライオン

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