ローカルと連携する プーケット発、新しい高級リゾートの形


「私は、このリゾートを自分の家のようなものだと思っています。友人が遊びに来たら、家で食事をするだけではなくて、自分たちのお気に入りの店に出かけたりするでしょ? 近くに日の出が美しい海岸があれば、そこで朝日を見て、すぐそばのローカルフードの麺の店で最高の朝食を食べたり……。こういうことが、心のこもった特別なおもてなしになると思うのです」


「この場所の澄み切った空気そのものも、今の『ラグジュアリー』」と語るラーク

映画のような美しい景色を楽しむだけでなく、手触り感のある体験としてリゾートを楽しむ。その土地のオリジナルを知りたい、原点を探索したい、という欲求を満たす体験が若い人の心を掴んでいる。現地の人とのコミュニケーションを含め、自分だけが得られる経験、つまりパーソナルな体験であればあるほど、思い出に深く残るものになるだろう。

「これまでの高級リゾートの価値観でラグジュアリーを追求すると、どうしても画一的になってしまう部分がある」とラークは言う。

どこかの似たような他のリゾートと、絶対的に違う何か。それを彼は、地元との協働という形で成し遂げようとしている。

タイ産のナチュラルワインを合わせる

「地元との協働」という意味では、トリサラの敷地内にある2つのレストランも同じ考え方で貫かれている。

まず、プーケットで唯一ミシュランの1つ星を獲得した「プル(PRU)」。植えて(Plant)、育て(Raise)、理解する(Understand)という頭文字から名付けられたレストランだが、前菜がそのコンセプトを体現している。

「植える」は、ホテルの目の前のアンダマン海で釣ったアジのスモークに、自家農園で採れたグリーンピースと、パッションフルーツ。



「育てる」は、島内をはじめ、タイで育つ季節の食材がメイン。私が訪れた日は、タイ南部のホアヒン(Hua Hin)地区でサステイナブルな方法で育てられたチョウザメを使ったもので、オスの身をスモークにしてピクルスにした薄切りのビーツの中に包み、上にはメスの卵、つまりキャビアを載せていた。

「理解する」は、シェフのジミー・オフォーストが独自に理解し、解釈した味を提供する。春は、ヨーロッパではアスパラガスと生ハムが旬なのだが、プーケットではアスパラガスは育たないため、プーケット産のネギをアスパラガスに見立てるというシェフの「解釈」を加えたものが供される。

「火を通したネギは甘くて、アスパラガスのような味がする。なので、炭火で焼いて甘みを出したネギを、チェンマイ産の黒豚の肉で作った自家製ハムで巻いた」とオフォーストシェフは語る。
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文・写真=仲山今日子

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