Close RECOMMEND

世界38カ国、800万人が愛読する経済誌の日本版


──坂野さんは、学生活動でモンゴルに行き、その後はフィリピンで物流会社勤務を経て、ゼロ・ウェイストアカデミーに加わりました。キャリアの軸となるパッションや自分がわくわくする瞬間はありますか?

例えば、いまカードゲームを作っていて、子供達が実際に遊んでいるうちに、きちんと理由を学んだ上で、自分ごととしてどうやってごみを減らすのかを考えて発信してくれる様子を見るのが好きですね。

ごみが減るというのはあまり目に見えません。計量している重量は出せますが、「ない」は見えない。例えば、お店でストローを出していない状態は、絵にならないですよね。表現するのは難しいんですが、結局、その人の美意識や感情、感覚、哲学だと思います。様々な仕組みを作ることで、そういった個人の美意識や感覚に変化が起きる。それに触れられるのが嬉しいです。お店でおしぼり出さなくても意外と大丈夫だったり。当たり前だと思っていたことを一緒に疑ってみるのもすごく楽しいですよね。

私はもともと、人間と関わる仕事があまり好きではありませんでした。鳥が好きで環境分野に入ったので、子供のころは人間とは環境破壊をする悪い存在で、絶滅した方がいいとさえ思っていた。いまのように「人の意識が変わるのが嬉しい」という感覚はありませんでした。

変わったきっかけの一つが、大学一年生の春休みに訪れたフィリピンです。所属していた学生団体「アイセック・ジャパン」のプログラムで、貧困地域に2週間滞在し、中国やナイジェリアから来たほかのインターン生と地元の人たちの商売をどのように改善できるかを議論しました。

インターン生は国籍もバックグラウンドも違う。現地の人も全く違う生活環境にいて、価値観や宗教観の話をすると衝突するのですが、最終的に地元の人々がどうやってより良く生活していけるのか、という話でつながるんです。環境のためでも人のためでも、最終的には同じです。皆、よりよく生きたいと思っている。その時に短期的ではなく、長期的によりよい環境になるように、皆の想いや考えをつなげられたらいいと思っています。

──どんな未来が来て欲しいですか?

一つはいまの自然環境が続いている、もしくはリカバリーしている状態。いま私たちが生活で使っているものは、使えば使うだけ環境が悪くなります。それが、どのような生活をしていても、生活をすればするほど環境が良くなるといいですよね。使うものを変えれば、実はいまの技術やビジネスモデルでも可能です。

そういった取り組みを始める会社も増えてきました。例えばある会社が開発した洗濯用洗剤は、化学薬品を使わずに自然由来の材料だけを使うことで、流せば流すほど自然界の菌が活性するそうです。人が生きている限り、常に自然への影響はありますが、良くも悪くも科学テクノロジーが進歩しているので、逆に環境を再生産できる方向にいければ、そういった未来は夢ではないと思います。

──1歳の長女がいらっしゃいます。子育てのフィロソフィーはありますか?

愛情さえあれば何とかなると思っているので特にないですが、色々なバックグラウンドの人に会うのは大事だと思います。

WEFの若手組織「グローバルシェイパーズ大阪ハブ」の活動で、小学校や中学、高校に出前授業を行い、キャリアや仕事の話をしています。WEFの2016年のレポートで「小学生の6割近くは現在存在しない仕事につく」と言われています。これからはますます想像がつかない時代になっています。

とはいえ、私が子供の時も将来の仕事は想像がつきませんでした。結局子供は、親や先生、身近な人など、会ったことがある大人の想像しかつきません。それが本人の限界になってしまいます。仕事の定義も変わっていますし、生き方や働き方、生活の仕方はたくさんある。色んな人に会って、自分の考え方を拡張することが大事ですね。


坂野晶(さかの・あきら)◎関西学院大学総合政策学部卒業、大学時代、海外インターンシップを運営する「アイセック・ジャパン」に所属し、プログラムの企画や運営に従事。大学5年目でモンゴル支部の代表を務める。卒業後はフィリピンにて外資系の物流会社で働きながら、友人と特産品のネット販売やカフェを手がける会社を起業。物流会社を辞め、14年に上勝町に移住。15年よりNPO法人ゼロ・ウェイストアカデミー理事長。

構成=成相通子 イラストレーション=Luke Waller

VOL.14

「好き」が生みだす脅威の集中力。やりたいこ...

VOL.16

「女の子」が主体性を奪還。山戸結希が10代の...

PICK UP

あなたにおすすめ

合わせて読みたい