根性論はもう古い。スポーツの「常識」を更新するテック企業3社

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学校教育の体育や部活動に、疑問を抱いたことがある人は少なくないだろう。逆上がりができなければ「できるまでやれ」、タイムが伸びなければ「とりあえず100回繰り返してみろ」。具体的な改善点を示さないままやる気でなんとかさせようとする根性論が、なんとなく「常識」としてまかり通っている。

その常識をテクノロジーの力で覆そうとするのが、スタートアップだ。4月8日から10日の3日間に渡って開催された「SPORTS TECH TOKYO」のキックオフカンファレンスには、全世界から最先端のスポーツテック企業が100社以上も参加した。

その中には、心拍数の計測や最新の科学的な知見の導入によって、スポーツの「常識」を変えようとする企業の姿もたくさんあった。注目すべき3社を紹介しよう。

最新マシーン&センシングを駆使する「未来のスポーツジム」


Boston Biomotion提供

「世界で最もインテリジェントなトレーニング」を目指すマサチューセッツ工科大学(MIT)発のスタートアップBoston Biomotion。彼らが開発するのは、効率的なトレーニング&リハビリプログラムと、それを実現するマシーンだ。なんと、彼らの最新マシーンを使えば、従来のジムでの筋トレに比べて約3倍の効率で筋力を高められるという。

そのメカニズムは、動画を観ると理解しやすいだろう。キモは、トレーニングマシンの「ジョイント(接合部)」だ。



従来のケーブルマシンではケーブルが一箇所で固定されているため、ケーブルを引く/戻す運動をしても体には1方向からの力しかかからない。一方で、Boston Biomotionのマシーンはあらゆる方向に動く複数の接続部があるので、アーム部分を引っ張る運動をするだけでもあらゆる方向から腕に負荷がかけられる。

しかも、1方向に強い負荷がかかりにくくなるので、ケガのリスクも軽減。トレーニング中の筋肉の動きは常にセンサーで監視し、よりベストなトレーニング方法を提案してくれる。


Boston Biomotion創業者、CEOのSam Miller

彼らはスポーツ業界のどのような点をアップデートしようとしているのか? Boston Biomotion創業者、CEOのSam Millerは、Forbes JAPANの取材に対して次のようにコメントした。

「僕らが変えたいのは、フィットネスジム。あそこで使われているストレッチマシーンは、40年近くほとんど進化していない。最先端のロボットとあらゆる動きを測定するソフトで、それを刷新したかったんだ」

いまはプロアスリート向けにサービスを提供しているが、いずれはフィットネスジムのように全国にマシーンを設置し、サブスクリプション型のビジネスを展開するつもりだという。日本からは、すでにハードウェア・スタートアップに特化したVCのMakers Boot Campが出資。アスリートだけでなく、ビジネスマンの筋トレにも革命をもたらしうる存在だ。
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文・人物写真=野口直希

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