根性論はもう古い。スポーツの「常識」を更新するテック企業3社

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IoT版マウスピースが選手の安全を守る

ボクシングやアメフトの試合で度々話題に挙がる、頭部に強い衝撃を受けることで発症する「脳しんとう」。症状の多くは一時的な頭痛やめまい程度だが、ひどい場合には後遺症として記憶障害や注意力の低下といった、脳の異常を引き起こすことがある。

Prevent Biometricsが開発するのは、試合中にそれを検知・アラートしてくれるIoT版マウスピースだ。内部に搭載したセンサーを通して、頭部の揺れのスピードや向き、頻度を計測。これらの情報はBluetoothを通じて手元のスマートフォンからリアルタイムで確認できる上、危険値に達した場合はアラートを発してくれる。


Prevent Biometrics提供

彼らがアップデートしようとしているのは、試合中の「レフェリーストップ」だ。

「実は、現在は選手が退場だと判断される脳しんとうの明確な基準値は、ありません。試合を続けるかどうかを判断しているのは、選手当人やレフェリーの主観というとても不確かなものなのです。実際、数多くの脳しんとうが試合中には気づかれなかったという調査もあります」

そう語るのは、Prevent Biometrics CMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)のDavid Siegel。機械による客観的な測定で、主観頼みの判定では気づかれなかった危険をいち早く発見したいのだという。


Prevent Biometrics CMOのDavid Sigel

「すでに約50のプロチームでテストしていますが、新たな発見もありました。これまで多くの場所で基準とされていた数値より少ない衝撃でも、脳震盪は頻繁に起こっていたんです」

これからテストが進めば、脳震盪の新たな対策なども見つかるかもしれない。正式版は、今年の夏から販売開始予定だ。

データと主観の「ズレ」を確認。いま本当に必要な指導

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ユーフォリア提供

ここまで紹介したのは最新テクノロジーで選手のコンディションを数値化するサービスだったが、ユーフォリアが提供する「ONE TAP SPORTS」は、数値化したデータを実践の「準備」に生かせるよう働きかけるプラットフォームだ。

近年はスポーツウェアやリストバンド、時計などあらゆるアイテムがIoT化し、呼吸や筋肉の動き、疲れの度合いなどを測定している。ONE TAP SPORTSはそうしたハードウェアと連携して情報を統合。選手のコンディションにまつわるあらゆる情報を集約してくれる。
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文・人物写真=野口直希

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