ビジネス

2019.04.12 07:00

京都の芸術家たちが掲げる、ビジネスとアートを結ぶ7つのキーワード

左から美術家の田中英行、kumagusuku代表の矢津吉隆、MAGASINN KYOTO編集長の岩崎達也


アートとビジネスの関係性を見てきた田中が感じたのは「アート思考がベースにあるアイデアで成功する企業が増えている」ということだった。「最近、スタートアップ界隈ではアーティストと酷似した思考方法が行われていると感じるが、AirbnbやUberはまさにその先駆け。マーケティング観点で考えると『他人を家に招くなんて、他人の車に乗り込むなんてありえない』という意見が多数を占めるだろう。にもかかわらず彼らは大成功した。誰もが自らの家に、車の中に他人を招き入れたいと思う仕組みをスマホ一つで作ったというのは、リレーショナルアート(関係性を重んじる美術)の観点からこれらのビジネスモデルを捉えた時に、もはやアートを超えているとも言えるだろう」。
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これらはまさにビジネスに対して「アート思考」が大きな風穴をあけた実例だった。

ビジネス視点を持つ岩崎も「ビジネスマンは新しいフレームワークを日々インプットしていて、アート思考がトレンドになっている側面もあるだろうが、おもに1を10にするためのマーケティングとは異なり、0から1を生み出したり、アイデアをジャンプさせたりする役割を担うのがアート思考だ」と語る。

ちなみに、今回の私塾ではすべての講義が終わった後に受講者がプレゼンを行う予定だが、その手法は「展覧会」とユニーク。ここで得た知識や思考方法をもとに、PowerPointやKeynoteにとらわれない表現方法を考え、発表してもらうことで、実際の「アート思考」的アウトプットを実践してもらう計画だ。
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「アートを鑑賞することでインスピレーションを得ると言われるが、アートはあくまでも自分の中にある引き出しを開けてくれるような鏡でしかない。作品鑑賞はある種自分との対話で、こうした感覚はまさにビジネスに応用できるのではないか」と矢津。古都・京都から、世の中を変えるビジネスが生まれる日もそう遠くないかもしれない。

田中英行/美術家
2007年 京都市立芸術大学大学院美術研究科修了。国内外の多くの展覧会、映像祭に出展、受賞など。京都市立芸術大学、京都精華大学、嵯峨美術大学等での非常勤講師を経た後、NPO法人Antenna Media設立。美術家、映像作家、コンテクストデザイナー、クリエイティブディレクターなど、ボーダレスにアーティストの視点から様々なスタイルでクリエーションを実践

矢津吉隆/美術家、kumagusuku代表
1980年大阪生まれ。京都市立芸術大学卒業。京都造形芸術大学ウルトラファクトリーディレクター。美術家としての活動と並行して宿泊型アートスペースkumagusukuを2013年に始動。2015年にKYOTO ART HOSTEL kumagusukuを開業した。 現在はシェアスタジオの運営やアーティスト向け賃貸プロジェクト「BASEMENT KYOTO」や、アトリエから出る廃材を流通販売する「副産物産店」など、アートのインフラに関わる事業を展開している。

岩崎達也/EDIIT株式会社共同創業者・取締役、MAGASINN KYOTO編集長
1985年生、兵庫県三木市出身、京都市在住。京都大学サービスMBA講師。京都精華大学非常勤講師。リクルートコミュニケーションズ、楽天を経て2014年京都へ移住し、ロフトワーク京都に勤務。2016年、泊まれる雑誌マガザンキョウトをクラウドファンディングを活用し起業。様々なプロジェクトの受け皿として、2017年EDIIT Inc. を創業。

文・写真=角田貴広

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