NY伝説のシェフが語る時計収集への「偏愛」

ニューヨークと東京を拠点にシェフ活動を続けているマイケル・ロマーノ


2001年に米国で最も権威があると称される「ジェームズ・ベアード・アワード」にて「ニューヨーク・ベスト・シェフ・アワード」を受賞したロマーノ氏のキャリアのスタートは1971年。フランスやスイスの星付きレストランなど世界各地で修業を積み、88年にNYでユニオン・スクエア・カフェのシェフとなった。

93年に彼が料理長に就任すると、同店は97年から2002年まで全米No.1のレストランガイド「ザガット・サーベイ NY版」の人気レストラン部門において6年連続で1位を獲得するようになる。

以降、同店は“予約の取れないレストラン”として注目され続け、ロマーノ氏は同店の共同経営者や、ユニオン・スクエア・ホスピタリティ・グループの共同経営者の職位を得ながら「伝説のシェフ」として華々しい活躍を続けてきた。

07年、六本木の東京ミッドタウンに姉妹店となる「ユニオン・スクエア・トウキョウ」がオープンすると、彼はパートナーシェフに就任。オープン当時から現在に至るまで、「ユニオン・スクエア・トウキョウ」では、ロマーノ氏が監修する、大ぶりのハンバーガーやステーキといったニューアメリカン料理にイタリアンの要素を強く取り入れた新鮮な味覚が人気を集めているのである。

一流のシェフという立場で考えたとき、ロマーノ氏はIWCの時計職人の精巧な技術のどのような部分に惹かれるのだろうか。

「以前、時計職人の方にお会いし、ムーブメントを外して、その後で元に戻すという作業を一緒にやらせていただいたことがありました。その集中力や繊細な技に感嘆すると同時に、料理はここまで緻密でなくてよかったと思ったんです。

優れたシェフとは、食材が持つ微妙な味の違いを区別し、それを他の味のものと組み合わせることによって魅力的でおいしい料理をつくる能力が秀でている人のことを指します。もしもシェフと時計職人の仕事に似ている部分があるのだとすれば、ひとつのバネから時計をつくることと、出汁のようにベースとなるものから味わいを引き出してレシピを導いていくことが、近いのかもしれません。どちらも、奇跡のようなものですから」

彼が携わるユニオン・スクエア・ホスピタリティ・グループのレストランが人気店である要因は、提供する料理や飲み物の素晴らしさだけではない。

グループ名に「ホスピタリティ」と入っているように、顧客をもてなすことを何よりも優先する姿勢が、成功の最大の秘訣だとロマーノ氏は話す。
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文=吉田彩乃 写真=廣瀬順二

この記事は 「Forbes JAPAN プリンシプル・カンパニー」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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