遺伝子に反逆する「利他的」な生き方を|CEOの一冊

リチャード・ドーキンス著『利己的な遺伝子 40周年記念版』

各界のCEOが読むべき一冊をすすめる本誌の連載「CEO’S BOOKSHELF」。今回は、TableCheckの谷口 優CEOが、「利他的」な生き方を選択するきっかとなったという『利己的な遺伝子』を紹介する。


自分でも説明できない感情が芽生えたり、理解されない行動をしてしまったりという経験は、誰もがもっているものです。その感情や行動に「遺伝子」が深く関係していることが、ここ数十年の生物学の進歩によって解明されてきました。

本書はその進歩の一助を担った一冊で、「すべての生物は、遺伝子を運ぶための生存機械だ」という著者の理論は、世界に衝撃を与え、今もなお多くの人々に読み継がれています。

私が、本書を手にしたのは10年以上も前のことですが、幼い頃から「自分の意識はどうやって芽生えるのか」「なぜ自分は自分なのだろう」などと、自意識そのものを不思議に思ってきたことも手伝って、夢中で読み進めました。

本書の中で著者は、「個々では寿命の短い遺伝子も、自らをコピーしながら、人間という生存機械を乗り換えることで、長きにわたって生き続ける。したがって、生物は利己的だ。親が子に対して利他的なのは、自分の遺伝子を受け継いでいるからに他ならない。

一見、他人のために行動しているようでも、自分の遺伝子を守るためという利己的な意思が働いているのが、生き物なのだ」と書いています。それが今の定説。我々はきっとそういう生き物なのでしょう。

では、人間はこの遺伝子の宿命から逃れることはできないのでしょうか。

答えはNO。著者は、「我々には創造者に歯向かう力がある。唯一人間だけが遺伝子に反逆できる」と、人間の可能性について説き、遺伝子に従うだけが人生ではないことも併せて書かれています。

古代ギリシャの格言に、「汝自身を知れ」という言葉があります。自分を知ることで、怒りなどの様々な感情をどれだけ抑制できる力があるかを知ることができる、という意味です。

感情を抑え、理性を働かせて、人のために生きる。私は、本書を読んだことで、遺伝子の言いなりにならない「利他的」な生き方を選択できるようになったと感じています。

一経営者としてもそうです。利己的な事業で利益を得るのではなく、「人が喜んでくれる」「私欲ではない」事業で、多くの人に受け入れられ、その結果生み出されるのが利益であるべきです。

わが社が提供するレストランのクラウド予約顧客管理システムも、「人のためになること」を柱に、数百におよぶレストランの要望をヒアリングしながら開発を進めました。すでに17カ国で導入され、日本発のクラウドサービスとして前例のないビジネスに成長しています。

しかし、まだまだ道半ば。これからも「利他的」にビジネスを追求し、レストランと消費者双方にとっての「最高のレストラン体験の実現」に貢献していきます。

title : 利己的な遺伝子 40周年記念版
author : リチャード・ドーキンス
data : 紀伊國屋書店 2916円(税込)/584ページ


たにぐち・ゆう◎1984年6月生まれ。神奈川県出身、シンガポール育ち。CyberSource日本法人、English OK(現・ピクメディア)を経て、2011年TableCheckを設立し、CEO(最高経営責任者)に就任した。

構成=内田まさみ

この記事は 「Forbes JAPAN プリンシプル・カンパニー」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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