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2019.04.09

「陰謀、策略、中傷だ」カルロス・ゴーン氏動画で訴える 現経営陣批判も 緊急会見で語られたこと

日本外国特派員協会で記者会見を行う弘中惇一郎弁護士(中央左)と小佐々奨弁護士(中央右、2019年4月9日撮影、Getty Images)

日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者の弁護人、弘中惇一郎弁護士と小佐々奨弁護士が4月9日、都内の日本外国特派員協会で記者会見を行った。

ゴーン容疑者は4日、会社法違反(特別背任)の疑いで再逮捕。会見では逮捕の直前に収録された動画が公開され、ゴーン容疑者の肉声が流れた。

会見場には、開始前から大勢の報道関係者が詰めかけ、国内外での関心の高さをうかがわせた。

会見の趣旨は、今回の4度目の逮捕の前日に録画されたビデオを公開し、ゴーン容疑者のメッセージを伝えることにあった。

ゴーン容疑者のメッセージの概要は以下であった。

「かけられている全ての嫌疑について、私は無罪である。私は常に無実である。私は日本にいたすべての時間を、日産のリバイバルプランに捧げてきた。今起きていることは陰謀、策略、中傷である。日産は、テーブルを囲んでコンセンサスを求めるのではなく、リーダーシップを発揮しなければならない時期に来ていた。それは、独裁ではなく『リーダーシップ』だ。『コンセンサス』か『独裁』か、どちらかの選択肢しかない人たちは、リーダーシップの本質を理解していない」



弘中弁護士が会見で話した、一連の騒動の経緯については以下の通り。


「4月11日に予定していた会見が開催できなくなったため、動画を公開することにしました。今日の会見は、4月11日の会見が検察側の妨害によって、万が一中止になる可能性も懸念して、準備したものです。ツイッターアカウントの開設との関連性はありません。

また、ビデオを作った時期は逮捕前であり、今回の、オマーン・ルート、特別背任の事件で逮捕される可能性などについては、触れていません。

ゴーン氏は動画の中で、誰が日産で陰謀を働いたかを明かしていますが、その実名部分は本人の同意を得た上で、弁護団の判断でカットしています。

動画を報道で直接使用する可能性についても、本人と話して明らかにしており、動画は今後、インターネットやSNSなどで広く拡散する予定です。

裁判の進行については、画像では触れられていません。検察からは、主張も証拠もほとんど出されておりません。こういう段階で、被告人が想像によって発言することは不適当であるため、触れていないものです。

動画の中で『フェアトライアル』の不在、という言葉が出てきます。弁護団としても、今回の4度目の逮捕勾留、捜索押収には問題があると思っています。

今回の容疑は、決して新しいものではありません。一連の問題として、かねてから報道されていた問題であり、検察官も、裁判所と弁護士との間の協議手続きの中でこの件は余罪であるとし、追起訴の対象となる可能性を述べていたに過ぎません。

3月5日の裁判所の保釈決定において、逃亡、証拠隠滅の恐れがないことは明確にしていたので、今回のみ、特別に逃亡や証拠隠滅の恐れがあることはあり得ません。

つまり、今回の逮捕勾留は逃亡防止や隠滅防止ではなく、ゴーン氏に不当な圧力をかけて屈服させることを目的としたものだと言えます。

一度保釈された人が再度勾留されるということは、当人に大変な精神的・肉体的ダメージを与えます。

検察官はこの残虐な仕打ちによって、自白を強要している。我々、弁護団は明日10日、この最高裁判所に特別抗告の手続きをします。

逮捕の際に行われた捜索では、キャロルの電話、パスポート、部屋の玄関に設置されていた監視カメラなど、逮捕には何の関係もないものが多数押収されていました。

逮捕の際に捜索押収が許されているのは、その被疑者がその事件に関係する証拠を持っていることが前提ですが、3回も逮捕され、所有品をすべて持って行かれたゴーン氏が、事件に関係する証拠を持っていないことは明らかです。

このような、いかなる手段を用いてもゴーン氏を有罪にしようとする行為は、デュープロセスやフェアトライアルに反するものです。

このような違法不当な操作に対しては必ず国内外の世論の批判を浴びるはずだし、弁護団もあらゆる方法を持って争っていくつもりです。
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文=石井節子

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