4月8日に公開された政府の白書では、オンラインプラットフォームを監視する新たな機関を設け、暴力的コンテンツをすみやかに除去しない場合は、厳罰を科す制度の導入計画が述べられた。政府はこの監査機関の運営にあたり、インターネット企業から資金を徴収する案も検討している。
「インターネットは人々をつなぐ前向きな役割を果たすことができるが、企業らはあまりにも長い間、ユーザーの保護を怠ってきた。特に、子供や若者が被る被害は甚大だ。新たな規制を導入すべき時が来た」とテリーザ・メイ首相は述べた。
提案書ではテロ活動や児童の性的搾取、リベンジポルノ、ヘイトクライム、ハラスメントや違法物品の販売など、様々なコンテンツが規制対象の候補とされている。さらに、これまでグレーゾーンとされてきた、ネットいじめや荒らし行為、フェイクニュースの拡散も規制対象になっている。
政府はプラットフォーム企業にファクトチェック機能の導入を強制することも視野に入れており、特に選挙期間中の偽情報の拡散を防ぎたい意向だ。
「様々な活動家や親たちの意見を聞いた結果、英国政府はインターネット企業に国民の安全を守る法的義務を負わせることにした」とメイ首相は述べている。「オンライン企業らは、プラットフォームの運営に責任を持ち、テクノロジーに対する国民の信頼を回復せねばならない」
この動きには多くの子供の人権団体らが賛同している。PR会社のEskenzi PRが先日実施した調査でも、英国民の83%が「フェイスブックは規制されるべきだ」と回答していた。回答者の10人に7人が、フェイクニュースが民主主義を脅かしていると答えていた。
反対派は「歴史的暴挙」と反論
ただし、表現の自由を推進する団体からは抗議の声もあがっている。規制の導入が、検閲につながる危険を彼らは指摘する。また、規制対象になるコンテンツの範囲が広すぎることも懸念材料だ。単なる暴言にも、規制が適用されかねない。
「今回の白書で定義された有害コンテンツは、今後のインターネット規制の土台になりかねない。英国政府の姿勢は、表現の自由よりも『政府がふさわしい取り組みを行っている』ことのアピールを重視しているようにも受け取れる」と、反対派グループIndexのJoy Hyvarinenは述べた。
「インターネットの規制にあたっては、表現の自由を侵害しないエビデンスに基づいた姿勢が重要だ」
シンクタンクのAdam Smith Instituteの主任研究員のMatthew Leshも、この意見に同調する。「英国政府が西側の世界を、検閲社会に導いてはならない」と彼は話した。
「英国政府はイランや中国やロシアに表現の自由がないと批判しているが、今回の提案は表現の自由や報道の自由に重大な危機を与える歴史的暴挙だ」
英国政府は今回の提案を検討し、最終バージョンを約3カ月以内にまとめる予定だ。