EUが目指す移動の未来、欧州全域を自動運転化する「MaaS」計画

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EU(欧州連合)の運輸部門の担当理事が、2030年までに完全な自動運転テクノロジーが実現すると述べた。発言があったのは、スロベニアで4月4日から開催されたカンファレンス「City as a Lab」でのことだ。

EUの運輸部門のVioleta Bulcは、交通事故による死亡者をゼロにするビジョンを掲げている。「自動車メーカーらは今年、新たに15の安全性向上や自動化を目的とした機能を、全ての車種に導入する」とBulcは続けた。

欧州委員会(EC)は先日、欧州全域で自動車への先進運転支援システム(ADAS)の装着を義務づけることで暫定的に合意した。この合意は、乗用車や商用車に運転中の眠気や注意散漫の警告システム、インテリジェントなスピードアシスト、センサーによる確認装置、事故発生時のデータを記録する「ブラックボックス」などの装着を義務づけている。

BulcはEUの運輸部門担当理事として、過去4年間で2300億ユーロにのぼるEUの輸送業界への出資を統括してきた。出資の大半は鉄道の整備に向けたもので、全体の70%を占めていた。しかし、欧州では民間と公共部門が連携し、全交通システムの統合化を図る動きが起きている。

「自動化が進むのは車の運転だけではない。ドローンや船舶、列車や航空機にも自動運転が導入される。私が究極の目標とするのは、全ての移動ツールを統合化することだ」とBulcは話した。

彼女が提示するアイデアは、欧州全域に広がるMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)の実現につながる。このようなビジョンは、北米大陸ではまだ提示されていない。

Bulcが提示したMaaSのプランは、単一のデジタルプラットフォームがあらゆる交通手段の入り口となる。旅行者はまず、ライドシェアの車両で路面電車の駅に向かい、駅に着いたらバスなどの公共交通を利用して、目的地に向かう。

ここで必要となるのは、料金の支払いやマッピングをシームレスに管理するテクノロジーだ。また、自動運転も重要な役割を果たすことになる。

Bulcが第2の目標と掲げるのが、石油エネルギーへの依存度を減らすことだ。彼女は2050年までに、全ての車両を完全に電動化するプランを描いている。欧州においては、交通機関から発生する二酸化炭素が、大気汚染の2番目の要因になっているという。

ただし、実現に向けての課題も多い。「持続可能な経済エコシステムと投資が不可欠だ」とBulcは述べた。しかし、欧州のMaaS化に向けて最も大事なのは、テクノロジーやビジネスモデルではなく、人々の姿勢だとBulcは話した。

「個別のテクノロジーではなく、全体を見通すことが必要だ。コンピューターや車やドローンについて考えるのではなく、どうすれば人々に役立つモビリティが実現できるかを考えなければならない」と彼女は続けた。

編集=上田裕資

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