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2019.04.09

有給休暇5日義務化で取得の「罪悪感」は薄まる? ──イタリアの「有給26日」との落差

Getty Images


日本でも、外資系企業サラリーマンの休み方は国際水準に近い?

では、日本国内の外資系企業のサラリーマンたちは、どれくらい有給休暇を消化しているのだろう。

3月19日、グローバル人材の転職を支援する人材紹介会社のロバート・ウォルターズ・ジャパン株式会社が、同社に登録のある「グローバル人材」(外資系企業や、グローバル展開の進む国内企業で働く日本人正社員)554人を対象に、「休み方」の実態を調査したアンケートを発表した。

中でも、昨年度の有給消化日数については、「15日以上」(26%)、「10日以上」(36%)、「5日以上」(21%)、「5日未満」(16%)という結果だ。つまり、6割以上が10日以上、8割以上が5日以上の有給を消化できている。

ロバート・ウォルターズ・ジャパンは、「4人に1人が、世界ランキングなどでボリュームゾーンとされてきた『15日以上』を既に取得できているのは、国際水準に近い休み方です」という。

ちなみに年齢グループ別では、30代が最も消化日数が多い。


出典:ロバート・ウォルターズ・ジャパン


出典:ロバート・ウォルターズ・ジャパン

「周囲が有給取得しないから5日も休めない」は1%のみ

消化が5日未満だった理由については、過半数が「仕事が忙しかった(体制・業務量の都合)」と回答。「非難されたことがある」は0%、「休みたいと思わなかった」は17%。よく問題とされる、「周囲が有給取得しないから」も9%と少ない。つまり、周囲を気遣って5日未満の取得に留まったのは回答者554人のわずか5人だった。

先のエクスペディア・ジャパンの調査で、日本人の中で「有給休暇の取得に罪悪感がある人」の割合が58%で、世界一だったことに照らせば、同じ日本人でも外資系企業に勤める人材の「休み」に対する態度は大きく違うようだ。

海外留学経験などがあり、日本以外の「常識」に触れてきた時間が長い、そういった人材を対象にした調査ならではの結果かもしれない。


出典:ロバート・ウォルターズ・ジャパン

日本にも実は江戸時代、国民的長期休暇の文化があった。「お伊勢参り」である。江戸から伊勢までの行きは東海道を20日間で、帰りは中山道を通って長ければ40日間の往復60日間、実に2カ月間にわたる休暇を100万人から150万人の人々が楽しんだという。当時は公方様の健康祈願という「名目」「大義名分」があったればこそ……、かもしれないものの、よく知られるフランス人やイタリア人のバカンスと比しても、日数ベースで言えば立派な「国際水準」ではないか。

21世紀に話を戻せば、2016年の米国の調査で、イケアとグーグルが「休暇の取りやすい企業」3位と4位にそれぞれ輝いた。またヤフーも2013年、「サバティカル」を導入して話題を呼んだ。勤続10年以上の正社員に在職中に1回、「充電期間」として、職務を離れた長期休暇を認める制度である。業績のみならず休暇文化も「国際水準」を目指す「優良グローバル企業」は、少なくないようだ。

世界の中で、日本市場が縮小していくことも覚悟しなければならない時代。大小問わず、企業がグローバル化を迫られてゆく可能性がある今。もしかすると江戸の昔に習い(ただし「大義名分」にはこだわらず)、休暇の取り方こそ国際水準を目指すべき時なのかもしれない。

イタリア語翻訳=大村紘代

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