「まさにここは、象徴的な場所です。ビルのこれまでの歴史を活かしながら、私たちが変革し、インスピレーションあふれる生産性の高い空間に造りかえました。ほら、そこに『YO』というオブジェが掲げられているでしょう? これはもともと、ビルの外壁に掲げられていたロゴを、クラスルームと呼んでいるこの部屋へ移設したのです。ビルに宿る精神を残したくて」
そう、ここはかつて「三陽商会青山ビル」だった場所。2015年にファッションブランド「バーバリー」と契約終了した三陽商会は、2018年に自社青山ビルを売却。「SANYO」のロゴサインを引き継いだのが、WeWorkだったというわけだ。
WeWork乃木坂
進出1年あまりでハイスピードの成長
2018年2月に六本木一丁目のアークヒルズサウスの拠点からはじまったWeWorkの日本展開は、わずか1年で東京、横浜、大阪、福岡の4都市16拠点にまで拡大。2019年中には名古屋でも開設が予定され、昨年開業した2倍の拠点数でのサービス提供を目標にプロジェクトが進められているという。グローバルで約40万人のメンバー数(2019年1月時点)を誇るWeWorkだが、日本でもその数は早くも1万人(2019年1月時点)となった。
そのスピードの秘密は、ヒル氏が「クリエイティビティの中心」と呼ぶ乃木坂拠点の地下空間にある。自社のデザイナーや建築家、プロジェクトマネージャーなどが集結し、2020年を見据えた各プロジェクトを推進している。「まるで家にいるみたいにリラックスできて、他の人とコラボレーションしたほうが生産性も上がります。すべて、とは言わずとも、ほとんどの“魔法(Magic)”はここで起こります」
オフィス内には至るところにアートワークが施されているが、それも自社のアーティストによるものだという。大手企業からスタートアップ、クリエイター、フリーランサーなど所属や規模を問わず、自由なコラボレーションを促すプラットフォーム設計でありながら、自社だけでも成り立つ生産体制を兼ね備えているのが、圧倒的なスピードを実現させている秘訣だろう。
ヒル氏は進出から1年余を経て、日本市場におけるWeWorkの成長に一定の評価を示す。「シビアな不動産市場の中、限られた選択肢から条件に見合うようなビルを見つけること。そして、ともに働く仲間を採用し、スタッフ教育と適切なチーム編成を行うこと。この二つの課題はありますが、幸いにして私たちは、日本企業やデベロッパー、ビルオーナーの皆様にもあたたかく迎え入れられ、短期間で強固なブランドを築くことができました。
多くの人々に未来の働き方を提案し、新たな機会を提供しています。簡単なチャレンジではありませんが、だからこそワクワクしますし、必然的にクリエイティビティが高まる状況が生まれていると思います」