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2019.04.08

グーグル、契約社員の最低時給「15ドル」に賃上げ 育児休暇も

Getty Images

グーグルは4月2日、契約社員の待遇改善と給与の増額をアナウンスした。米国で働くグーグルの契約社員の最低賃金は、2020年までに時給15ドル以上に引き上げられる。また、包括的な医療保険や年間8日間の病欠、12週間の有給育児休暇の取得制度も2022年までに導入される。

グーグル社員は高い給与と高待遇を得ていることで知られるが、アデコやコグニザントなどの企業から派遣される、社内でTVCと呼ばれる契約社員らは、これまで低い地位に置かれてきた。TVCとは、臨時社員(Temporary)や出向社員(Vendor)、契約社員(Contractors)の頭文字だ。

契約社員はプログラミングやマーケティングなどの専門性の高い職種から、カフェの運営や警備、荷物の運搬まで、幅広い職種で活躍している。アルファベットのデータによると、TVCとして雇用された人の数は、世界のグーグル社員の半数以上に達しているという。

昨年秋にはグーグル社員らがTVCの地位向上を訴えるデモ活動を行い、12月には会社に対する公開質問状を公開した。グーグルの今回の発表は、これらの契約社員が地位を回復できるかにはふれておらず、TVCの雇用の安定性にも言及していない。

グーグルに3月26日までTVCとして勤務し、労組のメンバーでもあったRachel Millerは、今回の会社の決定は大きな前進であると認めつつ、課題もあると述べた。

「我々の活動が一定の成果をあげられたことを嬉しく思う。しかし、新たな制度の多くは、2022年以降に実施されるものであり、現在TVCとして働く人々の大半はその恩恵を受けられない」

また、TVCの待遇は正社員と比べると依然として低いと彼女は話した。さらに、以前から問題になっていた社員が会社を告訴する権利についても、正社員とTVCの間では格差がある。

グーグルではセクハラ被害に遭った従業員に強制仲裁(forced arbitration)を要求していることが問題化していた。強制仲裁は職場での紛争を内密に処理し、雇用者が幹部を法廷で告訴することを防ぐための措置だ。米国企業の多くが、雇用契約に強制仲裁の条項を盛り込んでいる。

社員の抗議活動の結果、今年2月にグーグルは強制仲裁を廃止すると発表した。契約社員の一部も強制の中止対象となるが、外部企業を通して勤務するTVCには、この権利が与えられていない。

また、グーグルが契約社員の賃上げを実施することは喜ばしいが、彼らの動きは決して迅速ではなかった。フェイスブックは2015年の時点で、契約社員に最低時給15ドルを保証し、15日間の有給育児休暇を与えていた。

しかし、米国では従業員に対する健康保険や育児休暇の取得を義務づける法律がない中で、グーグルが新たな制度を導入したことは大きな前進だ。この流れに続く企業が現れることを期待したい。

編集=上田裕資

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