ビジネス

2019.04.07

ボッデガ・ヴェネタCEOが語る「新章の幕開け」

ボッテガ・ヴェネタ最高経営責任者(CEO)のクラウス=ディートリッヒ・ラース(写真=YAMA)


その控えめで寡黙なパーソナリティがまた、「多くを語らない自信」に裏付けられたエレガンスを標榜するブランド価値と合致しているようにも見える。

F:ボッテガ・ヴェネタは、ほかのブランドのように目立つブランドロゴを使わず、セレブリティを使った派手な宣伝もしません。そのようにディスクリート(控えめ)であることこそがボッテガ・ヴェネタを比類ないブランドに高めているわけですが、大衆にアピールすることと、控えめであることは、相反するのではありませんか?

L:製品をご覧いただければ、製品自体がブランドを語っていることがわかります。イントレチャートやノットをはじめとする意匠、ディテールがほかのブランドにはまねのできないものであり、それこそが他社との差別化要因になっているのです。私たちは、声高にブランドを主張せずとも成功できることを世界に示したリビングプルーフ(生きた証明)なのです。ミレニアルズが関心をもっているのはまさにその点です。

現在、私たちの身の周りを多くのノイズが取り巻いている。ボッテガ・ヴェネタはノイズとは逆の方向へ行き、ノイズだらけのなかで沈黙を守ろうとすることで、ある種の、静謐で時代を超越したラグジュアリーな世界を生み出している。

新しい旗艦店のイントレチャート模様のファサードは、晴海通りを歩くとおのずと目に留まる。ラース氏が目指したビジビリティーは確実に広がった。「”見えない豊かさ”を表現する」こともそうだが、「”控えめな価値”の可能性を広げる」ということも、実は極めて矛盾をはらんだ難度の高い発振である。この矛盾のはざまで絶妙なバランスをとりながら高級感を保ち続けるというアクロバティックな姿勢こそが、矛盾に満ちた時代に生きる私たちがボッテガ・ヴェネタに魅了される最大の理由なのではないだろうか。


ボッテガ・ヴェネタの世界観を伝える新・銀座フラッグシップ


売場面積約800m2でアジア最大級の旗艦店。6階分のスペースを贅沢に使用し、メンズおよびレディースの既製服をはじめ、ハンドバッグ、レザーグッズ、アイウェア、シューズなど豊富なコレクションを取り揃える。さらに、フレグランス、ジュエリー、家具・インテリアを中心としたホーム&ファニチャーまでも展開し、幅広いラインナップでボッテガ・ヴェネタの世界観を発信する。©Nacása & Partners Inc.

住所/東京都中央区銀座5-6-1
tel/03-6280-6612
営業時間/11:00〜20:00 不定休

CLAUS-DIETRICH LAHRS◎1963年ドイツ、ビーレフェルト出身。ケルン大学で経営学の修士を取得後、90年にデルトン入社。関心をもっていたラグジュアリーブランドビジネスでキャリアを築き、カルティエ、ルイ・ヴィトンの北米部門、クリスチャン・ディオールで上級職を歴任。16年ボッテガ・ヴェネタ最高経営責任者に就任。

写真=YAMA 構成=秋山都

この記事は 「Forbes JAPAN プリンシプル・カンパニー」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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