ビジネス

2019.04.07

ボッデガ・ヴェネタCEOが語る「新章の幕開け」

ボッテガ・ヴェネタ最高経営責任者(CEO)のクラウス=ディートリッヒ・ラース(写真=YAMA)


F:そのローカライズの一例が、まさに銀座における新旗艦店というわけですね。銀座旗艦店を、従来の2丁目から5丁目の晴海通りに移転し、新しくオープンされたわけですが、その狙いはなんでしょうか?

L:お客様にとってビジビリティー(可視性)を広げるという形で、ボッテガ・ヴェネタの強い存在感を伝えたかったのです。ボッテガ・ヴェネタはグローバルなラグジュアリーブランドですが、ここ銀座店は、日本の需要に合うようにローカライズされた重要な店舗です。日本のお客様は洗練されているし、求めるレベルも高い。その期待を満たすように銀座店に投資しました。アジアでは最大規模の店舗となります。

F:ラースさんは、多くのラグジュアリーブランドの要職を経験されていらっしゃいますが、ボッテガ・ヴェネタがほかのブランドとの違うところはどこでしょう?

L:イタリアの伝統的遺産のひとつであるクラフツマンシップの価値を十分に理解し、これをラグジュアリーブランドに昇華させた点です。伝統をフレッシュな視点で解釈し、職人技を現代のモードにふさわしい形に洗練させました。伝統に対してこれほど理解あるアプローチをしてきたのはボッテガ・ヴェネタのみです。

ボッテガ・ヴェネタのビジネスは、職人技がブランドの基軸であるという信念に基づいている。その伝統を次世代に継承していくために、モンテベッロ・ヴィンチェンティーノのアトリエに、職人養成・支援のための学校も併設している。またこの養成学校は過去にヴェネツィア建築大学と提携し、バッグのデザインや商品開発に関する大学院レベルの上級コースを設けたこともあった。

静謐で時代を超越したラグジュアリー

F:このたびボッテガ・ヴェネタのクリエイティブ・ディレクターとして、32歳の英国人、ダニエル・リーを起用されました。長年、ディレクターを務めたトーマス・マイヤーに代わり、彼を起用した理由を教えてください。

L:次の世代、つまり彼の同世代に訴える力をもち、ラグジュアリーに新しいニュアンスを加えてくれるクリエイティブ・ディレクターとして彼に期待しました。今の若い世代は、ブランドに対してエモーショナルな結びつきを重視します。彼はそうした世代に訴求できる。また、レディ・トゥ・ウエアに強みを発揮することができるので、性別を問わずすべての人にアピールする服を創る力があります。またレディ・トゥ・ウエアに対する解釈をレザーグッズへも適用することで、ボッテガ・ヴェネタに新しい変革を起こしてくれるはずです。

実際、リーは、イントレチャートをマキシサイズにしたバッグを創ったり、クラシックな靴にイントレチャートを応用したりして、新しいボッテガ・ヴェネタの世界を見せてくれた。ご参考までに、リーはこの世代のデザイナーとしては珍しくインスタグラムをやらず、華やかなファッション業界の交友関係も少ない。白いTシャツとジーンズに身を包んだ美男であることと、セントラル・セント・マーチンズ(英国)の卒業生であること以外、彼に関する情報はほとんど見つからない。
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写真=YAMA 構成=秋山都

この記事は 「Forbes JAPAN プリンシプル・カンパニー」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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