一杯の酒と向き合う空間に身をおくひとときは、明日への活力となる。
清冽な滝を前に、ジャンプする一頭の真っ白な鹿……「黒松白鹿」の印象的なTVコマーシャルをご記憶の方も多いだろう。「黒松白鹿」は1920年の誕生以来、来年でなんと100歳! 1世紀にもわたり、愛されてきたこの酒の魅力を知るためには、「黒松白鹿」を生んだ辰馬本家酒造の歴史に触れる必要があるだろう。
辰馬本家酒造は1662年(寛文2年)の創業。創業者である辰屋吉左衛門が兵庫県・西宮の自邸内に井戸を掘ったところ、その水が清冽甘美であったため、これを用いて酒造りを始めたのだそうだ。後世、美酒の産地とされる西宮には宮水(みやみず)と呼ばれる芳醇な地下水があり、この宮水で仕込んだ酒はキレがよく辛口で、その風味から「灘の男酒」「灘の生一本」とも呼ばれた。江戸時代には江戸へ廻船で運ばれて「下り酒」として珍重されたのも、この灘の酒である。
「黒松白鹿」はこの350年余の歴史を持つ辰馬本家酒造により、当時の最高の技術をもって産み出された。誕生以来、ちょっと贅沢な日本酒として我々の食卓を彩り、約100年もの長きにわたって受け継がれ、進化を続けてきた。
ところが日本酒の国内消費量は75年をピークに減少傾向である。ここ数年は吟醸酒、純米酒などのアッパークラスの商品に人気が偏りがちのようだが?
「自分がおいしいと思う日本酒は何なのか? 舌で判断して好みの酒を見つけていただきたいと造り手としては思います。その結果が、吟醸なのか純米なのか本醸造なのか純米大吟醸なのかと言うだけで、特定名称酒の種類より日本酒の味や香りにファンがついてくだされば、ますます楽しい日本酒ライフが過ごせると思います。『黒松白鹿』はこの先も変わらず食を楽しむ、時間を楽しむ、皆さまに笑顔になっていただける日本酒として進化させていきたい」と語るのは辰馬本家酒造の辰馬健仁社長だ。
また、この「黒松白鹿」を開店から40年に渡って愛用しているという新橋の割烹「以志井」の店主、石井市郎氏も「『黒松白鹿』は食事をよりおいしくしてくれるパートナー。私の料理には欠かせません」と熱烈なエールを送る。「黒松白鹿」を囲んで肴をつまみ、会話に花が咲く
……我々の日本酒の原体験のような時間の価値は、昔も今も変わらない。
上撰 黒松白鹿 本醸造
度数:15~16%
容量:1800ml
価格:1798円(税別、参考小売価格)
問い合わせ:辰馬本家酒造 白鹿お客様相談室(Tel. 0798-32-2727 平日9:00~17:00)