問題とは、競争と市場の飽和だ。ホールフーズの買収は、アマゾンの利益を考えれば大失敗だったということになるかもしれない。
アマゾンに買収されるよりもずっと以前、ホールフーズは富裕層が多く、ミレニアル世代もベビーブーマー世代も高級食料品を購入できるような地域を選び、適切な場所に適切なタイミングで店舗を開設していた。
また、1980~2010年はホールフーズが扱う自然食品やオーガニック食品の人気が急速に高まった時期だった。ホールフーズの売上高と店舗数はこの間に飛躍的に増加。同社はウォール街の注目を集め、株価は大幅に値上がりした。
だが、良い時期はいつまでも続くわけではなかった。同社はそのうち、悪い時に悪い場所に店を開くようになり、売上高も店舗数も、伸び悩むようになった。何が問題だったのか?──その答えが、競争と市場の飽和だ。
まず、買い手であるホールフーズも競合するその他の多数の小売店も、販売するオーガニック商品を自社で生産するわけではない。農家から仕入れている。買い手としても売り手としても、各社の間には競争という問題が起きる。
そして、もう一つの(恐らくより深刻な)問題が、市場の飽和だ。ホールフーズが扱う商品を売ることができる裕福な人たちが住む地域には、すでに店舗を出し終えている。そのため売上高の成長は鈍化、価格圧力は高まり、利益率は低下し始めた。
米バンヤンヒル・パブリッシングのシニア株式アナリスト、ジェフ・ヤスティンによれば、これこそがホールフーズがアマゾンに身売りした理由だ。米国内には、ホールフーズがアマゾン傘下に入る前のビジネス・モデルによって拡大を続けていけるだけの裕福な地域は存在しない。
さらに問題なのは、市場の飽和と競争は、アマゾンに買収されたことで解決されるわけではないということだ。ヤスティンは、「2017年のホールフーズの買収は、同社にもアマゾンにも良い結果をもたらしていない」と指摘する。
ただ、公平を期するために言えば、結果は出なかったものの、ホールフーズは市場の飽和に対応するため、別ブランドで店舗を展開するなどの努力はしていた。
ヤスティンによれば、ホールフーズの当時の経営陣は問題を認識し、2014~16年には平均世帯所得が下がる地域にも出店するようになった。また、ミレニアル世代を主なターゲットとして、より低価格帯の商品を取り扱う「ホールフーズ・マーケット365」を展開した。
だが、これらの計画はいずれも、期待したほどの成果を上げられなかった。そしてアマゾンは現在、商品の値下げによってこれらの問題を解決しようとしている。
アマゾンのこの方針は、逆効果をもたらすかもしれない。オーガニック製品を販売する高級スーパーというホールフーズのイメージを、曖昧なものにしてしまう可能性があるからだ。アマゾンが新たな食料品スーパー・チェーンを展開する計画を打ち出したのは、こうしたことのためだろう。
値下げはホールフーズの利益率をさらに低下させると考えられる。親会社であるアマゾンの株主にとっては、残念な知らせだ。