豪政府がFBらの暴力コンテンツ放置に厳罰、役員の投獄も

オーストラリア首相、スコット・モリソン(Photo by Tracey Nearmy/Getty Images)

オーストラリア議会は、先日発生したクライストチャーチのテロ事件を受けて、ソーシャルメディア企業に対し、「忌まわしい暴力的コンテンツ」をすみやかに削除することを強制する法案を可決した。

この法の遵守を怠った企業には、年間利益の最大10%の罰金や、役員の投獄などの罰則が科される。

「ソーシャルメディア企業らは、残忍なテロリストによるテクノロジーの悪用を防ぐため、あらゆる対策を講じる義務がある。我が国はこの義務を企業の良心に委ねるのではなく、法として定める」とスコット・モリソン首相は声明で述べた。

「忌まわしい暴力コンテンツの共有行為(Sharing of Abhorrent Violent Material)」と題された法案は、コンテンツの削除期限を定めていないが、テロや殺人、レイプ、誘拐にかかわる内容を対象としている。

司法長官のクリスチャン・ポーターは記者会見で、フェイスブック上のクライストチャーチの殺戮現場のストリーム動画が、ライブ配信中に200名に視聴され、再生回数が約4000回に達したことにふれた。

「このような動画が1時間以上にわたり放置され、彼らが何の対策も取ろうとしなかったことは全く理解しがたい。私だけでなく、全てのオーストラリア国民が同じ思いのはずだ」とポーターは話した。

「今回の法案は動画の放置を犯罪行為に位置づけ、フェイスブックのような企業にプラットフォーム上のコンテンツに対する責任を負わせるためのものだ」

しかし、この法案が狙い通りの効果を生めるかどうかは疑わしい。フェイスブックによると、動画をライブ配信で観た視聴者からの通報はなかったという。仮に通報があった場合、同社は即座に動画を削除し、コピーがされないよう対策を講じたという。しかし、問題の動画は約30万バージョンに及ぶコピーが作成されて出回った。

一方で、議会が法案の審議に十分な時間をかけず、通過させたことに対し抗議の声をあげる団体もいる。彼らの意見では、審議の過程で表現の自由の問題が考慮されていないという。この法案は検閲につながり、過剰な削除を引き起こす可能性があるというのが反対派の意見だ。

「オンライン上の表現を取り締まる法案を、わずか数日で可決させたのは大きな過ちだ。政府と議会のメンバーらは、反対派の意見を押しやることで、貴重な議論の機会を駄目にした。慎重な議論を重ね、様々な意見を考慮した上で法案の成立を目指すべきだった」と、政策アナリストのLucie Krahulcovaはメデイアの取材に応えた。

「有害コンテンツのアップロードや、リンクの共有を完全に防ぐことは、現実的には難しい。暴力的なテロ行為と、警察による暴力を即座に見分ける魔法のアルゴリズムは、この世に存在しない」と彼は続けた。

編集=上田裕資

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