キャリア・教育

2019.04.05 18:30

「自分の登っている山が違うと思えば、降りて別の山を登ったらいい」山脈型キャリアのススメ


「キャリア」を降りる決断

インシアードを卒業し、ビザの関係で帰国せざるをえませんでした。日本の企業(商社)に再就職し、またビジネスの世界に戻りました。

「30歳になる前に年収は大台に乗り、毎月海外出張して泊まるのは5つ星ホテル、出張先の移動はタクシー、食事はレストラン。お給料が増えても出張中はほとんど経費が出るので使う暇がなく、出ていくのはほとんどいない東京のアパートの家賃くらい。」(キャリアの下り方 – 1より)

この暮らしやこのキャリアから「降りよう」と思ったのは、やはり将来日本に住むことを想定していなかったからです。今の生活に安住するよりも海外で暮らせる新しいキャリアを見つけようと思いました。その後にシンガポールで出会った夫のイギリス転勤が決まり、第一子がお腹にいるまま、移住をしました。

インテリアデザイナーは無給から


クローデンがデザインした自宅(写真=クローデン葉子)

イギリスの「インテリアデザイナー」はあまり日本にない職業です。日本にある職業で言い換えると、既存の建物のリノベーションをする建築家。

イギリス、特にロンドンは新築はあまり建てられていません。規制も厳しいですし、19世紀に建てられた建物がいたるところにあります。そのため、インテリアデザイナーは、仕事の90%が既存の建物の改修になります。

私は前から「場所」にこだわりを持つ人でした。旅行をはじめとして、新しい場所にいくのが好きです。出張ばかりしていた時に、サービスアパートメントに泊まることが多くありました。サービスアパートメントは壁や家具が全部白、ベージュで統一されていたり、住む機能が揃っていればあとはなんでもいいようなデザインだったりしました。私の場合、そのような場所で何日も過ごすと落ち込んで暗くなっていきます。自分がいる場所で自分のムードが影響されていきました。

イギリスに来てから、空間がそれだけ人のムードに影響を与えるならば、場所や空間を美しくする仕事につきたいと思うようになりました。インテリアデザインに対して潜在的な興味はあったのですが、今まで自分の仕事にしようとは思っていませんでした。イギリスではそのマインドが文化として受け入れられていたので、目指しやすかったのだと思います。

それでもゼロからのスタートだったため、インテリアデザインを学んだ学校を卒業したての頃は無給インターンから始まりました。現在は自分の建築事務所を開くまでになりました。

「山脈型キャリア」の作り方

自分のキャリアをいきなり変えるのは難しいと言われますが、もし自分の登っている山が違うと思ったら、降りればいいんです、それだけです。私は降りるタイミングを待っていました。逆に今自分のやりたいことができていれば、登り続けたらいい。みんなが同じ山を登り続ける必要はありません。

同じ山を登って降りるだけの人生が「富士山型」であるとするならば、別の山にも登ったり降りたりする「山脈型」の人生があってもいいと思います。

22、3で働き始め、70代後半まで働くとすれば約50年あります。最初の10年間、違う山を登っていても全然大したことはありません。これだけ費やしてきたんだからって、あとの人生で間違った山を登り続ける必要はありません。

山を降りてみないとわからないこともあります。私だってすぐにはわかりませんでした。私のようにフルタイムで変えなくても、今は副業ができるところも増えているので、どんどん試したらいいと思います。
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文=井土亜梨沙

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