同ブランドの商品の需要は国際的に伸び続けており、国外での(特に中国市場での)人気を利益に変えるためには、店舗の開設が最適な方法だと考えられる。
再開発中の複合施設「ビクトリア・ドックサイド」に開業する2階建ての店は、レストランを併設する予定。ケイト・ホブハウス会長はこの計画について、「世界的な事業拡大を目指す私たちにとって、アジア地域での新規事業は重要な次のステップだ」とコメントしている。
面積およそ650平方メートルとなる香港店は、スターフェリーの乗り場やアベニュー・オブ・スターズといった同地のランドマークからも近い場所に位置する。
創業312年にして初めて国外にこうした店舗を構えることは、フォートナム・アンド・メイソンにとっては間違いなく、非常に大きな方針転換だ。重要なのは、新たな計画が成功するかどうかということだ。
文化は「売れる」
英国は現在、国会議員たちのおかげで嘲笑の的になっている。だが、真の英国のブランド、中でもフォートナム・アンド・メイソンに対する世界的な需要は依然として強い。
フォートナム・アンド・メイソンは、英国の文化と伝統を的確に伝えていくことで顧客に強い愛着を持ってもらえるという特異な位置づけにある。それも、複数の感覚レベルにおいて、顧客とのつながりを持つことができる。それは、ロンドンのピカデリーにある店舗を訪れれば証明されることだ。
今後の成功の鍵となるのは、伝統的な英国の文化が持つどのような特徴が中国の消費者を引き付けるのかを明確にし、それらを消費者の感覚的な経験を通して宣伝し、広めていくことだろう。
幸いこれは、フォートナム・アンド・メイソンが得意とするところだ。「英国のブランド」と聞いて頭に浮かぶものは他にもあるかもしれない。だが、中国の消費者が大きな魅力を感じる「受け継がれた遺産や伝統」を誰よりも体現しているのは、フォートナム・アンド・メイソンだ。
必要なものは全てそろっている。肯定的な感情を引き出すように意図された、消費者のいくつもの感覚に訴えかける経験、そして他にはない英国らしさ──これらはほぼ必然的に、フォートナム・アンド・メイソンを文化的に差別化し、魅力的にするものだ。
本当の問題は、同社が成功するかどうかではなく、なぜこうした計画を今まで実施してこなかったのかということかもしれない。