そんな旧態依然としたコンテンツ制作の現場にツールを提供することで、生産性の向上を図る。そして、クリエイターがより創造的な仕事に取り組める環境の実現を目指し、ネットフリックスはProdicleを立ち上げ、Moveというアプリを試験的に開発した。
「私たちが実現したいことは、クリエイターの方々が最大限に創造性を発揮できる環境を制作現場から整備することです。私たちが提供するツールを使ってシームレスなコミュニケーションを体感してもらい、プロジェクトが終わったときに『ネットフリックスとまた仕事がしたい』と言ってもらうことを目標にしています」(エイミー)
スタジオ・テクノロジー ディレクターのエイミー・トーニンカサ
開発にあたって意識したのは、制作現場の意見を取り入れること。制作過程における課題は、実際に制作に取り組む人たちにしか分からない。ネットフリックスは2017年にMoveを10作品の制作現場で提供し、実際に使ってもらう。そこで得たフィードバックを、プロダクトに反映させる。
そして2018年には40作品の制作現場にツールを提供。改善のプロセスを何度も積み重ね、プロダクトの完成度を高めていった。
エイミーによれば、開発にあたって、とりわけ注力したのはアクセスとモジュール化、ローカライゼーションの3つだという。
「実写作品の制作には約8〜12か月間にわたって、200〜500人ほどのクルーが関わります。彼らの多くはフリーランスで他の仕事にも携わっていて、すごく忙しい。ですから、どんな場所からでもアクセスできるようにしなければなりません」(エイミー)
赤色がネットフリックスの従業員で、灰色がフリーランスの人たち。割合はフリーランスの方が圧倒的に多いことがわかる。
実際、ネットフリックスはMoveをWebアプリケーションからiOS、Androidで利用できるネイティブアプリへと移行。より簡単にアクセスできるようにしている。
エイミーはさらにこう続ける。
「私たちはツールの活用を強制したくありません。あくまで使いたいと思ってもらうことが大前提です。クリエイターが望むものを使えるようにモジュール化する必要がありました。そして私たちは世界中でコンテンツ制作しているのでローカライズは重要です。現在、Prodicleはすべての地域で利用できますが、今後は日本語、ポルトガル語、スペイン語の3言語を筆頭にローカライズも推し進めています」(エイミー)
Prodicleの立ち上げから2年。エコシステムは拡張を続けており、Move以外にもDistribution、Contactsなど、7つのツールをプロダクションに提供しているという。