ビジネス

2019.04.05

残業時間20%削減も 可能性に満ちた「オフィス音楽」の世界

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現在USENは、損害保険やレジ、Wi-Fi、監視カメラ、電力やガスなど幅広い店舗経営支援サービスを提供する。新たな事業の柱が着々と育ちつつあるが、一方で有線放送業界のシェアは依然1位。約4万4000社がUSENの音楽配信を導入している。

「Sound Design for OFFICE」は、買い物の際に誰もが耳にしている「店舗・施設用BGM」に続いて2013年に始まったオフィスに特化したサービス。店舗用とは別にわざわざオフィス用のサービスを始めたのは、そこで流す音楽に単なるBGM以上の価値をもたせたかったからだ。


「Sound Design for OFFICE」の設置機械(写真提供:USEN-NEXT HOLDINGS)

「はじめは、当時話題になっていたメンタルヘルス対策の一環になればと思い、オフィス環境をより良くするサービスとしてスタートしました」

「Sound Design for OFFICE」では、「ボサノヴァで聴くJ-POP」などオフィスでも違和感なく流せる歌詞のないチャンネルを揃える一方で、集中力を高める効果があるといわれる楽曲をオリジナルで用意するなど、機能的な音楽のラインナップを増やしていった。ここ最近では、一昔前には仕事中に音楽を流すなんて考えられなかった大企業でも、USENを導入するケースが増えているという。

「最近ではBGMがないと社員が勝手に音楽を聴いてしまうことも多い。イヤホンによってコミュニケーションが生まれなくなることを防ぐために、社内に音楽を流す企業も多いようです」

企業によって活用法は様々

さらに注目を集めるきっかけになったのは、近年の「働き方改革」だ。働きやすい環境づくりの一環として、音楽の導入を進める企業が急増。ノー残業デーやプレミアムフライデー用のチャンネルを設けるなど、USENでもいち早くこの流れに適したラインナップを追加した。今回の「帰宅を促す音楽」も、その一環だと言える。

「『タッチ』の浅倉南を演じる声優の日髙のり子さんが帰宅を呼びかけてくれるアナウンスなどを用意しました。流すタイミングがハッキリしているチャンネルは、企業さんにとっても利用しやすいようです」

とはいえ、「Sound Design for OFFICE」の活用の仕方は企業によって様々だ。昼食の後にはハイテンション気味のチャンネルにして眠気を防ぐなど、USEN社員でも想定していなかった使い方をしている企業も少なくない。

「面白かったのは、終礼の合図に『ロッキー』チャンネルを流して残業時間を20%以上も削減したケースです。ロッキーの音楽に合わせて席を立ち、そのまま終礼を行うのでもう一度席につくことなくスムーズに帰宅できる流れができているのだとか。音楽と終礼を組み合わせたからこその効果だと思っています」

現在、「Sound Design for OFFICE」で利用できるチャンネル数は100以上。これからも随時、新たなチャンネルを増やしていく。また、大学との共同研究にも意欲的で、現在は早稲田大学や東海大学と共同研究をしているという。

まだまだ新たな活用法もありそうな「オフィス音楽」の世界。あなたのオフィスに活気を与えるのは、もしかしたら音楽なのかもしれない。

文=野口直希

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