アメリカでは2016年、テスラ・モデルSの運転者が、「オートパイロット」という自動運転モード作動中にトラックと衝突して死亡。そのニュースが、自動運転の安全性にスポットを当てた。話によると、同車のオートパイロットが、「白いトラック」と「眩しい空」の区別をきちんと読み取れなかったようだ。
また記憶に新しいところでは、2018年3月、アリゾナ州でテスト中のウーバーの実験車が歩行者を引いて死亡させ、同社は実験を取りやめた。しかし、ウーバー社はペンシルバニア州政府から実験再スタートの許可をもらい、テストが再び開始された。
先月、アメリカの有力シンクタンク「ランド研究所」は、カーメーカーや自動運転の開発者は、実験過程をしっかり終えないまま、なるべく早く一般道に自動運転車を導入しようとしているのではないかと懸念を表明している。社会に対する安全性を甘く見ているのではないか、と。
特に死亡事故を低減できることを証明するには、何百万km、いや何億kmの距離を走らなければならないというが、それだけの距離を走破するためには、リアルワールドではなく、バーチャルで走るしかないと言う。
アメリカの自動運転車開発企業ウェイモは、自社開発のシミュレーション技術の活用により、リアルワールドでは1500万キロ、バーチャルでは70億キロと、どの会社よりも多い実績があると主張しているが、「それだけ走っても、絶対に事故らないとは言い切れない」と、ランド研究所はいう。
自動運転分野にも視野を広げている半導体メーカーNVIDIAは、これまででもっとも信頼できる安全テストデーターが出せるように、「ドライブ・コンステレーション・シミュレーション」を発表した。当然バーチャル・シミュレーションではあるけど、太陽の角度、あらゆる電柱の種類、天候、道路状況、歩行者の動き方、交通の流れなど、数千の走行状況が想定できるとのこと。これらのテストで、自動運転の安全性がどれだけ確認できるか、自動車業界は注目しているようだ。
しかし、これだけの実験をやり通すためには、数十年、場合によっては100年以上はかかるとランド研究所は見ている。つまり、一般人に普通に使用させる前に、リアルでもバーチャルでも、どれだけ走行しても、自動運転の安全の確認するのは、無理ではないかというのが同研究所の主張だ。