伊藤穰一が見出すゲームの可能性 「それはテクノロジーの力を最大にする」

MITメディアラボ4代目所長 伊藤穰一




──テクノロジーの進化によって、人々はもっと「時間」や「暇」ができてくると思います。ゲームはその時間を豊かにするものなのでしょうか。

カーター:この10年、100年、1000年における人類の進化によって、人は暇な時間をより多く持つようになりました。その傾向はこれからも変わらないでしょう。その変化の中で注目すべきは、時間を1人で過ごすのではなく、より他者と交流するようになったということです。

例えば、私たちはゲームを一方向にプレイするだけでなく、ゲームを通して双方向でコミュニケーションするようになりました。Game Closureは今チャットボットにも注目しています。そこではゲームのキャラクターがチャットに現れて、私たちと話せるようにもなります。

伊藤:人々とAIや社会とAIのインターフェイスがゲームのようになると思っています。例えば、学習をゲームのように楽しくすることで、今よりもずっといい学びの経験ができるようになります。翻訳や取材などの伝統的な仕事に関しても、もっと遊びがあればよりクリエイティブで楽しくなる。

ゲームを漫画などと同じようにカテゴリー分けをすること自体がもう古くさいかもしれません。全てのものごとは、エンターテインメント性のある「ゲーム要素」を取り入れることができるからです。健康だってゲームで遊ぶように管理することができるでしょう。

日常生活にもっとゲームを取り込むことは可能です。AIはそれをより簡単にすると思っています。しかし全てをゲームにしてしまうことのリスクもあるかもしれません。

カーター:例えば、家族のグループチャットで一緒にゲームができるようになれば、親は子供が遊んでいるゲームを知るだけでなく、子どもと交流をし続けることができるでしょう。普段はゲームをしない人でも、このようなコミュニケーションによってプラットフォームに呼び寄せることができるのです。それが結果として市場の拡大へと導きます。

──ゲームによって世界が閉ざされるリスクはないのでしょうか。

カーター
:もちろん1人でゲームをする機会はあります。しかし1人でゲームをし続けると、ある時点でもっと競争したい、もっと他の人と交流したいと思うようになります。もしかしたらその「他の人」はあなたの知らない人かもしれません。

伊藤
:私はゲームはもっとソーシャルになっていくと思います。実際、教育者や他の業界の人たちが関わろうとしています。私が役員を勤めている他の会社Akiliでは、ゲームを通してADHDの人や認知障害の人へのセラピーに取り組んだり、お医者さんが薬の処方や子どもたちとの連絡に、ゲームをどのように活用できるかみています。また、高齢者にゲームを遊ばせることでどのような効果があるかも研究しています。

薬や健康診断に関していえば、子どもたちや高齢者にきちんと応じてもらうのはとても難しいことです。でも、もしそこに「遊び」を入れたら、より多くの人が答えてくれるでしょう。

文=井土亜梨沙、写真=小田駿一

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