伊藤穰一が見出すゲームの可能性 「それはテクノロジーの力を最大にする」

MITメディアラボ4代目所長 伊藤穰一

「私はゲーム会社に投資することはあまりしていません。それはとてもリスクのあることだからです」

そう語るのは、早朝の会議を終えたばかりというMIT(マサチューセッツ工科大学)メディアラボ4代目所長の伊藤穰一。しかし、その伊藤は外にもシリコンバレー発のゲーム会社Game Closureの役員に就任している。しかも、彼は2011年から同社に初期投資もしているという。

ネットワークの知識人として知られ、IT関連企業を多数起こしたり、エンジェル投資家の顔をもつ伊藤が、今なぜゲーム会社にここまで深く関わるのか。

伊藤が役員に就任したGame Closureは、ダウンロードやインストール不要で、フェイスブックやLINEなどのプラットフォーム上で直接プレイできる「インスタントゲーム」を開発している。創業者であるマイケル・カーターは世界中で毎日20億人以上が使用するネットワーク通信規格「HTML5 WebSocket(ウェブソケット)」の発明者でもある。

伊藤はなぜGame Closureに注目したのか。伊藤とカーターの二人に話を聞いた。

インスタントゲームに「夢」を見つけた伊藤穰一

──2人が最初に出会ったのはいつでしょうか。

伊藤穰一(以下、伊藤):マイケルとの出会いは2011年です。August Capitalというベンチャーキャピタルで働くハワード・ハーテンバームを通じて知り合いました。ハーテンバームは初期にスカイプに投資をした人物です。

この会社の役員になったのは去年のことですが、投資をし始めたのは2011年ごろ。MITメディアラボの所長に就任したばかりで、かなり忙しかったのを覚えています。

その時に、彼が「HTML5 WebSocket」でゲーム開発をより簡単にしたと聞き、その技術にとても感動しました。それだけでなく、ネットがドキュメントを読むだけのものではなく、アプリのように機能する可能性があることに魅力を感じました。アプリをダウンロードして買うのではなく、ブラウザにいながら遊べる。そこに「夢」を見つけました。

私はゲーム会社に投資することはあまりしていません。それはとてもリスクのあることだからです。一発当てて、そのまま復活しないということがよくあります。しかし、マイケルの事業は新しいビジネスモデルを作っていると思い、投資しました。

マイケル・カーター(以下、カーター):ジョイ(伊藤)と出会った頃、私はシリコンバレーで投資家や将来のアドバイザーに会っていました。ジョイはそれまで会った投資家の中で誰よりもテクノロジーに関する深い知識を持っている人でした。また彼は、アジア、特に日本がゲームビジネスにおいてどれだけ重要になるかを説明してくれました。

去年8月に本社をシリコンバレーから東京に移しましたが、それも、ジョイが役員になることも、当時は全く想像していませんでした。
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文=井土亜梨沙、写真=小田駿一

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