3社は今後、マイクロソフトのAzureベースのクラウドで車両データを管理する。この動きはグーグルにとっては大きな脅威といえる。
Azureベースのプラットフォーム対応は、ルノーのコンパクトカー「クリオ(日本国内ではルーテシア)」と、日産が日欧で販売する電気自動車「リーフ」の一部モデルを対象に2019年後半から始動する。
今回の提携で、3社連合が世界の200市場で販売する全てのコネクテッドカーが、Azureのプラットフォームに対応することになる。
ルノー・日産・三菱の3社は昨年、グーグルと複数年契約を結び、アンドロイドを基盤としたプラットフォームで、「Google マップ」や「Google アシスタント」を利用可能にすると宣言していた。しかし、3社がデータの管理をマイクロソフトのAzureで行うことにより、グーグルは単なるソフトウェア提供企業のポジションになり、データを活用したビジネスができなくなる可能性が浮上した。
この動きはボルボとエリクソンの関係に類似している。ボルボは昨年5月に、グーグルと共同で車内インフォテインメントシステムを開発するとアナウンスしたが、9月には車両管理システムに5G通信対応のエリクソンのクラウドを用いると発表していた。
仮にグーグルが車両のデータを得られないとしたら、グーグルのAndroid Automotiveの存在意義はなくなる。グーグルがコネクテッドカー市場に進出するのは、車両のデータを取得しターゲティング広告を販売したいからだ。グーグルは携帯デバイスと同様な視点で、コネクテッドカーから新たな収益を生もうとしている。
ルノー・日産・三菱の3社連合とボルボの動きは、グーグルの戦略を真っ向から否定するものとなる。
グーグルが車両に搭載したソフトからデータ収集を行う道もあるが、データの量はAndroid Autoで得られるものと比べるとはるかに少なくなる。Android AutoはアップルのCarPlayやバイドゥのCarLifeと同様に、スマホのアプリの機能を自動車向けのインフォテインメントシステムとして提供するものだ。
しかし、グーグルのソフトは自動車メーカーにとってはブラックボックスであり、その動作をコントロールすることはできない。車両が工場で生産された時点では、予測できない機能をグーグルがソフトに持たせる可能性もある。ユーザー自身の判断で、車両データをグーグルにシェアさせることもあるが、自動車メーカーはグーグルの動きに懸念を高めている。
しかし、全ての自動車メーカーが車両データを自社で抱え込むことになれば、データ共有で得られるメリットも少なくなる。EV(電気自動車)の台頭により、既存のガソリン車の売上低迷に直面することになる自動車メーカーらは、データの活用で新たな収益を模索することを迫られている。