この問題に興味を持った私は、好奇心の世界的な専門家で、新著『Cracking the Curiosity Code(好奇心の暗号を解き明かす)』を執筆したダイアン・ハミルトン博士を取材し、好奇心とパフォーマンスの関係について聞いた。
ハミルトン博士は「人は誰もが生まれつき好奇心を持っているが、小学校に入学する頃になるとそれが衰え始める」と述べた。「教師が全ての『なぜ』に答え、子どもの興味を引くかもしれない全てのことを探求するのはほぼ不可能なので、教育環境がこれに影響しているのも意外なことではない。ただ、阻害要因となっているものに気づくことさえできれば、好奇心は再び向上させることができる」
ハミルトン博士は同書の中で、好奇心に影響を与える要素は4つあると述べている。それは恐怖心、臆測、テクノロジー、環境だ。
「従業員の多くは、自分のアイデアが拒絶され醜態をさらすことを恐れている。真の文化変革を目指す企業は、アイデアや質問を口にすることにはメリットがあると示さなければならない。『ばかばかしい質問などない』という姿勢を示すため、リーダーが普段質問しないようなことを聞いたり、通常はしないようなことを実践したりすることが効果的な場合もある」とハミルトン博士は指摘する。
またハミルトン博士いわく、「臆測とは、私たちが自分に言い聞かせていること。例えば『自分の考えはつまらない』といったものだ」。リーダーは、懸念を声に出すよう促すことで、部下の頭の中の声を鎮めることができる。正直でオープンな議論を行えば、どのようにして前進するかについて双方で決断できる。
テクノロジーは役に立つが、恐怖心を引き起こすこともある。私はこれまでに、ソフトウエアがうまく動作しなくていら立ちが爆発したことが何度もある。テクノロジーに圧倒されてしまった部下には、一夜のうちに全てを習得する必要はないと理解させることを、ハミルトン博士は勧めている。
また、環境も好奇心に大きな影響を及ぼす。私はコーチング業で抱える顧客から、質問が即座にはねのけられてしまう状況について聞くことが多い。そうすると従業員はすぐに、好奇心がキャリアの弊害となることに気付く。そして、目立たないようにして言われたことだけをやるのが最善だと考えるようになる。最終的にはこれに嫌気が差し、好奇心が歓迎される職場環境のある組織へと転職を考えるようになる。
優秀な人材を見つけるのは難しくなっており、イノベーションを追求する企業は、リーダーが意図せず従業員の好奇心を打ち消してしまうことがないように注意する必要がある。